独電力の再エネ比率、初めて50%超に
ドイツの発電量に太陽光や風力など再エネ電力が占める比率が、昨年初めて50%を超えた。ベルリンのエネルギー研究所「アゴラ・エネルギーヴェンデ(AE)」は1月3日、「発電量に再エネが占める比率が、2022年の44.5%から23年には8.1ポイント増えて52.6%になった。電力消費量に再エネ電力が占める比率も、22年の47%から23年には51%に増えた」と発表した。
緑の党と社会民主党の左派連立政権が再エネ促進法(EEG)を施行させて、グリーン電力への本格的な助成を始めたのは2000年。当時再エネ電力の発電比率は6.6%だったが、23年かけてようやく発電量の半分を超えた。
23年の再エネ発電量は、前年比で5.2%増えて2610億キロワット時(kWh)となった。22年には陸上風力の発電量の比率は18%だったが、23年には23%に増加。太陽光の発電量の比率も11%から12%に増えた。逆に褐炭火力と石炭火力の比率は、22年の31%から6ポイント減って、25%になった。褐炭と石炭の比率は、過去23年間で50%から半減した。
AEによると、太陽光発電設備の容量(キャパシティー)は前年比で約21%増えた。昨年新しく設置された太陽光発電設備の容量は、22年のほぼ2倍になった。昨年設置された太陽光発電設備の容量のうち、69%は建物の屋根に取り付ける太陽光発電設備だった。「ベランダ太陽光発電設備」と呼ばれる団地の手すりにぶら下げる太陽光発電パネルを買う市民も増えた。
AEは太陽光発電設備の設置速度が大きく伸びた理由について、「ロシアのウクライナ侵攻の影響で化石燃料を使って発電される電力価格が高騰したため、電力費用を節約しようと、太陽光発電設備を自宅の屋根に新設する市民や企業が増えた」と説明した。ドイツでは昨年から、新築される公共の建物の屋根に太陽光発電設備を取り付けることが、法律で義務付けられている。
ドイツ政府にとって再エネ拡大は、最も重要な政策目標の一つだ。同国は30年までに消費電力の80%を再エネでまかない、35年までにはほぼ100%を再エネでカバーするという目標を打ち出している。38年に予定されていた石炭・褐炭火力発電所の全廃を、8年間前倒しにするという目標も持っている。45年には、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指している。
脱石炭と脱原子力を同時に進め、エネルギー部門の脱炭素化を実行するというドイツ人たちの野心的な計画は成功するだろうか?
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
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