うず
日本人のマナー
一般的に日本人はマナーが良く礼儀正しいといわれる。しかし、先日参加したある大学の入学式でこの先入観と異なる出来事があり、これまでの理解を打ち砕かれた。以下、そのくだりである。
入学式典会場前に入学式の立派な看板があり、記念撮影をしたい人々で長蛇の列ができていた。それぞれの喜びや感動を胸に撮影列は進み、自分の順番まであと5組ほど、ほっとしながら後ろを振り向けば、すでにまた大勢が並んでいる。
その時である。先頭から3組目あたりに15人ほどの男子学生がごっそりと割り込んできた。大量な割り込みに、同行者と顔を見合わせ、冷たい視線を送ったつもりだったが、団体には無視された。割り込みに気付いた後方の待ち行列からも、「割り込み」という言葉がもれたが、これまた無視された。
そこで、並んでいた一人の母親が大声でこう言った。
「じぶんら、割り込みせんとって、後ろにならびなさい」、関西弁のこの直球セリフに、私はこの女性を応援したくなったのだが、その直後のこの女性の娘の発言にしぼんだ。「晴れの席やねんから、そないなこと言わんといてくれへん?」
晴れの席はマナーを守らなくてもいいのか?並んで順番を待つのが筋だろう。この女子大生の言葉に、「今日は無礼講だから」とめちゃくちゃな杯をあげていた昭和の時代がふつふつとよみがえり、気持ちがざわざわした。この心中を知らず、15人の団体はどこ吹く風で集合写真、グループ写真、個人写真とさまざまに撮影を楽しみ余裕で去っていった。所変われば、人変わる。時代変わればマナーやルールも変わる。過去の許容できないマナー無視の経験まで思い出し、若者だからとか、多様化と言って片付けられず、指先にとげが刺さったような感覚のまま、女子大生と母親の後ろ姿を見送った。(こゆ美)