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ドイツとイスラエルのジレンマ(中)

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 ドイツ政府は、10月7日の事件の直後からイスラエル支持の姿勢を打ち出したが、国際社会ではネタニヤフ政権に対する批判が高まっている。ガザ地区に対する攻撃によって、パレスチナ人の間に死傷者が増加しているからだ。国連人道問題調整事務所(OCHA)は今年2月22日、「昨年10月7日以来、ガザ地区のパレスチナ人の死者数が2万9410人、負傷者数が6万9465人に達した。多くの遺体が砲爆撃で倒壊した建物の瓦礫の下にまだ埋まっている」と発表した。ユーロニュースは1月20日、「ガザ地区の死者の約70%が女性と子どもだ。ガザ地区の230万人の市民のうち、約190万人が住居を追われ、約50万人が飢餓の危険にさらされている」というパレスチナ保健省のコメントを引用している。
 イスラエル軍は昨年10月19日に、「ガザ地区のある建物に、ハマスの軍事拠点がある」として、この建物を攻撃した。この際に、近くの教会も被弾した。ここにはパレスチナ人のキリスト教徒ら約500人が避難していたが、そのうち18人が巻き添えとなって死亡した。人権団体アムネスティー・インターナショナルは「イスラエル軍は、多数の市民が避難している教会の近くを攻撃すれば多くの死者が出ることを知っていたはずであり、この攻撃は戦争犯罪だ」と批判した。
 イスラエル軍は、ガザ地区で多数の民間人が死傷している理由について、「ハマスは、市民が多く住んでいる地域にロケット弾の発射装置などを隠している。つまり、民間人を身を守る盾として悪用している。ハマスに対する攻撃の巻き添えになる市民の数が多いのは、ハマスの責任だ」と反論している。
 南アフリカ政府は昨年12月29日に「イスラエルのガザ攻撃はジェノサイド(民族虐殺)を禁じた国際法に違反する」として、即時停戦などを求めてハーグの国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。問題の法律は1948年に国連総会で採択され、1951年に施行された「ジェノサイドの禁止と処罰に関する協定」だ。この協定は、ホロコーストを逃れてポーランドから米国に亡命したユダヤ人の法律家ラファエル・レムキンが起草したもの。
 ICJは、今年1月26日に下した仮処分に関する決定の中で、南アフリカ政府が求めていた即時停戦は命じなかったが、「ガザ地区の人道的状況は悲惨であり、イスラエル政府は直ちに人道的援助の増加など、パレスチナ人たちの苦境を和らげるための措置を取らなくてはならない」と要求した。(つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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