ドイツ首相の訪中は不発?(上)
オラフ・ショルツ首相は約1年半ぶりに中国を訪れたが、ウクライナ戦争や貿易関係をめぐる意見の隔たりを埋めることはできなかった。
ショルツ氏は4月14日から16日まで中国を訪問した。ショルツ氏は、協議の重点をウクライナ戦争と経済問題に置いた。
ショルツ首相は習近平国家主席と3時間20分にわたり会談した。彼は北京で、「ロシアのウクライナ侵攻は国際的な秩序、国境不可侵の原則を乱し、ドイツの権益を直接害している。国連憲章にも違反する行為だ」と訴えた。そして習近平氏に対して、「中国はロシアとの緊密な関係を利用して、プーチン大統領が侵略行為をやめるように働き掛けてほしい」と要請した。
ショルツ氏が習近平氏に対して協力を要請した理由は、中国がロシアにとって重要なパートナーだからである。中国はロシアから大量の天然ガスや原油を輸入している。
だが、習近平氏の態度は冷たかった。同氏は「中国はロシア・ウクライナ戦争については中立的な立場を維持する」という公式的な見解を繰り返すにとどめ、ドイツ側の仲介要請を拒否した。
一つの焦点は、スイス政府が今年6月15日に開催する予定のウクライナ戦争に関する国際和平会議だった。ウクライナ政府のゼレンスキー大統領は、この会議に参加する予定だ。ドイツは中国が仲介役としてこの会議に参加することを期待している。
だが、習近平氏は「戦争を終わらせるための国際的な努力は評価する。しかし、そうした会議には、ロシアとウクライナが同等の権利を持つ国として参加するべきだ」と述べるにとどめた。中国側は、「ロシアとウクライナの首脳が参加しない限り、中国は参加しない」という姿勢を打ち出している。プーチン大統領はこの和平会議への参加の意思を表明していない。このため、習近平氏が参加する可能性も低いとみられている。
ショルツ氏が2022年11月に訪中した時には、習近平氏は「いかなる国も核兵器を使用することに反対する」と述べて、プーチン大統領がウクライナで核兵器を使わないよう要求した。当時この発言は、欧州では「中国が欧州諸国に足並みを揃えた。ドイツの外交努力の成果だ」として前向きに評価された。このためショルツ氏は今回も、中国がウクライナ戦争をめぐり、欧州に歩み寄ることを期待していた。だが、習近平氏は「ロシアの戦争に口を出さない」という態度を崩さず、ドイツに肩透かしを食わせた。
(つづく)
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
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