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新ヨーロッパ通信

テスラ初体験

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 先日パリで、初めてテスラのタクシーに乗った。「テスラの車は走るコンピューターだ」と言われることがあるが、実際、運転席にはパソコンのディスプレーのような大型の画面が取り付けられている。興味深いのは、この画面に周囲の車や歩行者、自転車、バイクなどの位置がアニメーションのように映し出されることだ。しかもセンサーは、近くにいるのが乗用車かトラックか、バイクであるかも識別して、白黒のイラストにして映し出す。車が離れると、画面から消えていく。周囲の車との距離が一目でわかるのは大変良い。前方に車が停車していてドライバーがブレーキを踏まないと、前方の車が赤色に変わり、警告音を発する。
 右折または左折する時には、画面に右後方または左後方の映像(イラストではなく、本当のカメラの映像)が映し出される。このため、後方から自転車などが来ないことを確認して、いわゆる死角を大幅に減らすことができる。パリで乗ったテスラ・タクシーの屋根は全体が透明だった。このため、パリの青空や街路樹、優美な建物を眺められるのがとても良かった。
 デジタル関係では、テスラはドイツ車に水をあけている。知人の自動車エンジニアは、「ドイツの自動車メーカーはあのような車をまだ作れない」と語った。欧州最大の自動車メーカー・フォルクスワーゲンも、テスラを最大のライバルと見なしている。
 テスラは、ドイツの電気自動車市場で一番人気があるメーカーだ。2024年1月にドイツで最も多く売れたBEV(電池だけを使う電気自動車)は、テスラのモデルYだった。この月だけで2393台が売れた。2位のスコダ社のエンヤの販売台数(1457台)よりも64%多い。テスラのモデルYは、標準価格が4万2990ユーロ~5万5990ユーロ(731万円~952万円、1ユーロ=170円換算、以下同じ)とかなり高い。ミュンヘンで富裕層が多い住宅街で、路上に駐車されているのを時々見掛ける。
 テスラは22年3月にベルリンの南西30キロメートルのブランデンブルク州グリュンハイデにBEVの組み立て工場を建設した。300ヘクタールの敷地に建設されたギガファクトリーの建設費用は58億ユーロ(9860億円)に上る。毎年50万台のBEVを生産しているが、近く生産台数を100万台に引き上げる方針だ。
 テスラの内装はシンプルで、内燃機関を使うベンツやBMWのようなさまざまなスイッチやレバー類はない。あちこちを操作しながら車を運転するのが好きな人には、やや物足りない感じを与えるかもしれない。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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