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新ヨーロッパ通信

イタリアは素敵だ

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 私は日本人の知り合いから、「なぜベルリンやフランクフルトに住まないで、ミュンヘンに34年も住んでいるのですか?」とよく尋ねられる。私は「その理由の一つは、イタリアに近いからです」と答える。
 私は、イタリアの文化、歴史、気候、食べ物、ワインが大好きである。過去34年間に約30回イタリアに行った。南部に位置するミュンヘンは、ドイツの大都市の中でイタリアに最も近い場所にある。
 ミュンヘンからイタリア国境までは、アルプス山脈を越える高速道路を使えば車で3時間しかかからない。シェンゲン協定のおかげで、ドイツ、オーストリア、イタリアに入る時には国境での検問もパスポート検査もない。高速道路を走っているうちに、いつの間にかイタリアに入っている。
 興味深いことに、アルプス山脈を越えてイタリアに入ると、気温がミュンヘンよりも高くなり、日差しが強くなるのを感じる。さらに南へ進めば、ドイツにはない形の樹木が目立ち始める。イタリアに入ると、高速道路の休憩所で飲むエスプレッソ・コーヒーの味が、ドイツで飲むコーヒーよりも格段においしくなる(イタリア人の親友によると、コーヒー豆の煎り方と水が違うせいだという)。
 イタリアに来て「すごいなあ」と思うのは、田園地帯、農村部である。イタリアでは、バスや鉄道の便がなく、車でしか行けないような辺ぴな村に、途轍もなくおいしい料理やワインを出すレストラン、ミシュランのレストラン・ガイドブックに掲載されてもおかしくない店がたくさんある。ウンブリア州でもマルケ州でも、ロンバルディア州でも似たような経験をした。イタリア人は日本人と同じく、食に対する執着心が強い。ドイツ人や米国人に比べると、「美味求真」の道を究めようとしている人が多い。だからこそ、辺ぴな村にも素晴らしいレストランがある。
 さらに、ルネサンス期の素晴らしい建築物、古代ローマの遺跡の数々も忘れられない。例えば、シチリア島のアグリジェントでは、アテネよりも保存状態が良い古代ギリシャの神殿の遺構を見た。火山の爆発のために灰の下に埋もれ、タイムカプセルのように保存された古代ローマの町を歩くことができるのは、世界でもイタリアのポンペイやエルコラーノだけだ。この体験は感動的だった。
 イタリアについての文章をつづっているだけで、「また行きたい」という気持ちが胸の中に沸き起こってくる。どうぞ一度、イタリアを訪れてみて下さい。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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