外国人が見た円安ニッポン
ミュンヘンの知人たちの間では、「日本に旅行したい」という人が増えている。わが国の文化、自然、食事に魅力を感じる人が多い。ドイツ人のAさんは2年前に屋久島や阿蘇山などを訪れて、日本が気に入った。ほとんど民泊を利用したが、スマホの翻訳機能とGPSを使えば、日本語の知識がゼロでも楽に旅行できる。今年は北海道に4週間旅行する。
去年私は東京から北海道に旅行した。新幹線の中で知り合ったインド人の若者は、「私は東京のIT企業で働いている。週末に北海道に行きたくなったので、新幹線に乗った」と語っていた。外国人は、新幹線の料金もあまり高く感じないのか。
ドイツ人のBさんは、ミュンヘンから愛用の自転車を運び、日本に5週間滞在した。東京から広島まで自転車で旅行した。雨の日も風の日も、1日当たり約100キロメートル走行した。日本はドイツに比べると、自転車専用道が非常に少ない。ある所では、自動車用のトンネルの中を20分間自転車で走ったという。四国に渡ろうとしたところ自転車で橋を通ることが禁止されていたので困っていたら、通りがかりの日本人が軽トラックの荷台に自転車を載せて運んでくれた。あるコンビニの前で休んでいたら、店主が飲み物と軽食をプレゼントしてくれた。Bさんは、日本人の親切さに感激したようだった。
ドイツでは、車にクラクションを鳴らされるのは日常茶飯事だが、「日本では5週間に一度しかクラクションを鳴らされなかった」と、日本のドライバーのマナーの良さにも感心していた。
当時1ユーロは約160円だった。このため、ユーロ圏からの旅行者にとって、日本での旅行は有利だ。Bさんは、「日本での宿泊代に、35ユーロ(5600円)以上払ったことはなかった。イタリアやフランスよりも全然安かった」と語った。ドイツでも35ユーロで泊まれるホテルはない。彼が泊まっていた浅草の旅館に迎えに行ったことがあるが、浴室はなかった。泊り客は近くの銭湯へ行く。隣の部屋との仕切りはフスマだったが、1泊4500円とお得な値段だった。旅慣れた感じの長髪の西洋人たちが泊まっていた。
Bさんは「日本ではラーメンのような暖かい食事がどこにでもあり、値段も安いので、助かった」と満足げだった。
日本政府観光局によると、2023年に日本を訪れた外国人の数は約2500万人。22年に比べて6.5倍に増えた。日欧間の金利差が大幅に縮小する兆しは見えないので、日本ブームは当分の間続きそうだ。
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
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