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モラル・ハザード

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 読者諸氏は「モラル・ハザード」という言葉をどうとらえておられるだろうか。各種保険に加入したことによって、健康管理や安全運転などに対する注意を加入前よりしなくなる傾向のことだが、全ての加入者に必ず生ずるものでもないと思われているのではないか。
 しかし、最近は保険制度に関わる問題から出発して、広く経済学や行動経済学の見地から、「社会的助成制度と自助努力のトレードオフの関係」ととらえて議論されているようだ。例えば、人口減少による税収不足に悩む地域が、「地方交付税」によって「地域活性化」の努力を怠るのではないか、「ガソリンに対する補助金」が「燃費の良い車両への買換え努力」を妨げるのではないか―など、経済全体に影響する「モラル・ハザード」が存在するという議論まである。
 これらが進めば、補償制度がそのリスクを増加させる。つまり「保険」は「自助努力」を怠らせる反社会的経済制度であるなどという過激な主張が出てくるかもしれない。
 無論、コラム子はこれに全く与(く)みしない。手術を受けねばならなくなったとき医師に入院を希望すると、あいにく差額ベッド代のない相部屋に空きがなく、早期手術を希望するなら個室でもよいかと聞かれた時のことだった。ベッドが空くまで我慢する選択もあり得るが、幸いにも某社の医療保険に加入していたため、個室でお願いしますと即答できた経験を持っているためだ。
 これなど私的医療保険による「モラル・ハザード」などではなく、正反対の早期治療の促進によるリスク削減、結果として公的医療費の節約につながる効用だと思っている。(朗進)

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