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旧東独で極右政党が大躍進(上)

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 旧東独の2州で9月1日に行われた州議会選挙では極右政党が大躍進し、オラフ・ショルツ政権に属する3党が全て得票率を減らした。中央政府に対する市民の不満が原因だ。
 選挙の勝者は極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)である。AfDはテューリンゲン州で得票率を前回2019年の選挙の23.4%から32.8%に9.4ポイント引き上げた。ドイツの州議会選挙で極右政党が首位になったのは初めてだ。AfDのビェルン・ヘッケ候補は「有権者はわれわれに深い信頼感を示した。われわれは政権に参加する準備がある」と述べた。
 AfDテューリンゲン州支部は、幹部らが外国人に対する差別的言動を繰り返していることなどから、州内務省の憲法擁護庁から「極右過激組織」として監視されている。ヘッケ氏はナチス突撃隊のスローガンを演説の中で使ったために国民扇動罪違反で有罪判決を受けた。それにもかかわらず、テューリンゲン州の有権者の約3分の1がAfDを選んだ。極右の躍進にドイツに住むユダヤ人らは不安感を強めている。
 衝撃的なのは、ショルツ政権を構成する社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)が全てテューリンゲン州で得票率を減らしたことだ。SPDの得票率はわずか6.1%だった。緑の党とFDPは得票率が5%を割ったため、テューリンゲン州議会に会派としての議席を持てなくなった(小党乱立を防ぐために得票率が5%に達しない政党は会派として議席を持てない)。SPD、緑の党、FDPの得票率を合計しても10.4%で、AfDの得票率の3分の1に満たない。
 AfDと並んで躍進したのが、左翼党(リンケ)の元副党首が今年1月に結成した極左政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」だ。親ロシア・反難民を標榜する同党は、元共産主義者ヴァーゲンクネヒト女史の圧倒的な人気を背景に、初めて参加した州議会選挙で15.8%を確保した。
 AfDが政権に参加する可能性は低い。同党は単独では議席の過半数を取れなかった。AfDと連立する意志を表明している党は一つもない。ドイツ公共放送連盟(ARD)は「CDUとBSW、SPDが連立政権を樹立しAfDの政権参加を阻止しようとするだろう」と予想している。
 同じ日に投票が行われたザクセン州でも、AfDの得票率は前回の選挙に比べて3.1ポイント増え、30.6%となった。CDU(31.9%)に次いで第2位である。CDUはザクセン州でもSPDやBSWとの連立の道を探り、AfDの政権参加を阻止する方針だ。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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