うず
美しいお母さん
フランス語で義理の母親のことをベル・メールという。言葉通りでは美しいお母さんということになる。語源は不明だが、英語では法律上の母親(mother in law)、日本語では姑と表現することと比べて違いが大きい。特に「姑」は実際の意味とは異なるだろうが、漢字だけみると女偏に「古い」などと、凡人の私は嫌みなニュアンスを感じてしまう。フランスでは義理の母親との家族関係が全てうまくゆくのかどうか定かでないが、美しいお母さんと呼ぶのは、フランスならではの一流の言い回しなのかもしれない。ちなみに父親もハンサムなお父さん(ベル・ペール)である。
私の義理の母親はまさにこの美しいお母さん、ベル・メールだったことをこの時期になるとよく思い出す。優しく穏やかで心のきれいな女性だった。私や孫のことも大変かわいがってくれ、年末年始などに実家に滞在するときには、暖かくもてなしてくれた。今思い出せば、不出来な嫁であったが、しかったりさとしたりすることなく、いつも暖かい人で、姑という字はまったくあてはまらず、やはりベル・メールだった。生前よく手紙のやりとりをしていたが、「お義母さん」と書くと寂しがり、「おかあさん」と書いてほしい、とよく言っていた。家族を愛し、人とのつながりを大変大切にしていた母だった。
今年も残り少なくなってきた。年末年始に里帰りされるご家族も多いことだろう。私の父母は、いずれも他界してしまい、帰る実家はすでにない。次の世代の子どもたちが、現在自分らが住む家に帰省して戻ってくる。数年後には彼らは家族をつれて立ち寄ってくれるのだろうか。その時には私自身がベル・メールでいられるように、心と身体の健康を維持してゆきたいと願う。(こゆ美)