うず
人のお世話をしたくて
人生二度目の入院・手術でお世話になった病院の病棟には、医師、看護師の他に「コンシェルジュ」と呼ばれる担当職員が配置されていた。純然たる入退院事務手続きは専任の事務職員が対応してくれるのだが、それ以外の入院時の身の回りの雑務、退院時の車などの各種手配、入院後判明した追加必要物の院内売店での購入、お見舞い面会者への受付取次対応など、いわば「病棟秘書」として入院生活を支えてくださった。
この病院、高額な「差額ベッド代」「個室料金」を徴収するだけではなく、それなりに患者が心置きなく入院生活を送れるよう細かい配慮をしているなと感じた。無論、これらを享受できるのは、毎回話題としている私的医療保険のおかげであることは言うまでもない。
退院時、担当だったTさんにお話をうかがうと、もともとはホテル業界を志望していたものの、コロナ禍で募集がなく銀行勤務となったが、「もっと人のお世話をしたくて」この業務を知り転職したとのことだった。
一方、アメリカで大手医療保険会社「ユナイテッドヘルスケア」のCEOがニューヨーク市の路上で射殺され、この事件に対して、同社の保険金支払い対応について、拒否(Denial)、遅延(Delay)、割引(Discount)などDを頭文字とする単語を想起させる「3D」を象徴表現とした批判がSNS上に多数投稿されていると聞く。
いかなる理由があろうと殺人は許されることではない。しかし、国の医療保険体制は異なるものの、医療保険従事者が、公的・私的を超えて「規定、効率至上主義」だけではなく、加入者のためという「人のお世話をする精神」を根底に持っていたら、悲劇は防げたのかもしれないと思っている。
(朗進)