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新ヨーロッパ通信

ウーバーの時代

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 私は講演のために、毎年ポーランドに行く。すでに20回以上訪れた。この国は好きだが、不快なのは、料金をごまかすタクシー運転手が時々いることだ。昨年11月にワルシャワからグダニスクへ列車で行き、駅からホテルまでタクシーに乗った。10分くらいの乗車だった。通常は10ズロチ(370円、1ズロチ=37円換算、以下同じ)程度の距離だが、降車時にメーターを見ると130ズロチ(4810円)だった。メーターの金額が通常よりも速く増えるように、運転手が細工していたのだ。一昨年ワルシャワで流しのタクシーを拾って空港に行ったら、通常の約2倍の金額を取られた。
 これに懲りて、私はワルシャワのホテルから空港へ向かう際に、初めてウーバーを使った。便利なのは、行先を入力すると値段が最初に表示されることだ。一番安く、近くにいる車を選ぶ。自分が話せる言葉で入力できるのも大きな利点だ。
 ワルシャワの中心部から空港まで普通のタクシーに乗ると、70ズロチ(2590円)かかる。だが、ウーバーで値段を比べたところ、45ズロチ(1665円)で行ってくれる人がいたので、選択した。その車が自分のいる場所に近づいてくるのが、携帯電話の画面で見える。車の番号と運転者の名前も表示されるので安心。わずか5分で車が私の所に来た。クレジットカードの番号を携帯電話に入力しておけば、降車時に料金を払う必要はない。運転者の態度についてアンケートで評価することもできる。領収書はウーバーからメールで送られてくる。ちなみに、ポーランドでウーバーのために働いているのは、ほとんどがタクシー運転手だ。彼らはウーバーの普及のために売り上げが減っているので、やむなくウーバーに参加しているのだろう。
 ウーバーはミュンヘンでも使われている。通常のタクシーでミュンヘンの中心部から空港まで行くと、通常110ユーロ(1万7600円、1ユーロ=160円換算、以下同じ)もかかる。だが、ウーバーなら70ユーロ(1万1200円)で行ける。
 ウーバーでは乗客が事前に料金を見ることができ、車を選ぶことができるので、入札の要素がある。顧客にとって有利だ。東欧や南欧のように、外国人観光客から通常よりも高い料金を巻き上げようとするタクシー運転手がいる国では、ウーバーは必須の道具だ。日本では過剰料金の請求はないが、近年人手不足のためか、タクシーが拾いにくい。配車センターに電話してもなかなかつながらない。私は、日本でもウーバーのようなサービスが普及することを願う。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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