国連気候保護会議に落胆の声
エジプトで11月6日から約2週間にわたり、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開かれた。参加国は地球温暖化の被害を受けている国々への援助について初めて合意したが、肝心の温室効果ガス(GHG)削減のための具体的な措置については前進できなかった。
最終合意文書の内容は、洪水や干ばつの被害をすでに受けている発展途上国にとっては画期的だった。これまで先進国は気候変動による被害の補償金について交渉することに消極的だった。しかし、基金の予算規模や誰が金を払い込むのかなど具体的な内容は決まっておらず、来年11月にドバイで開かれるCOP28に持ち越された。米国やEU加盟国、日本などが将来多額の資金の払い込みを求められることは必至だ。
ただし、この基金は、地球温暖化に歯止めをかけるという最も重要な目的には貢献しない。参加国は、この点について全く前進できなかった。
例えば、前回のCOP26で参加国は初めて、「GHG削減措置を施していない石炭火力発電所を減らし、非効率な化石燃料に対する補助金を段階的に停止する」という点で合意した。今回のCOP27でEU代表団は、「天然ガスと石油などの使用の削減」という一文を盛り込もうとした。しかし、中国と中東の産油国が頑強に抵抗したため、最終合意文書はこの点に言及しなかった。
COP27の参加国は「産業革命前の時代に比べて地球の平均気温の上昇幅を1.5度以下に抑えるために、2030年までにGHG排出量を19年比で43%減らす必要がある」という点では合意した。しかし、最終合意文書は、GHG削減をどう実現するかについては具体性を欠いている。
世界には、経済成長のために、今後も大量の化石燃料を使うことを計画している国々、さらにこれらの国々に大量の化石燃料を売ろうとしている国々がある。彼らは国益を優先させて、野心的な脱炭素措置を阻止した。
ドイツのハーベック経済気候保護大臣は「われわれは今回の会議の結果に満足することはできない」と批判した。大臣は「各国はこれまでに約束した具体的な対策を一つ一つ地道に実行するしかない。世界全体がエネルギー転換と産業界の非炭素化によって、石炭、石油、ガスから脱却しなければ、1.5度目標は達成できない」と指摘した。
欧州は今年、過去500年で最悪の干ばつを経験した。東南アジアでは甚大な洪水被害が起きた。人類は、住みやすい地球を将来の世代に引き継ぐことができるだろうか?
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
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