歯科治療の憂鬱
健康管理のため、年一度の健康診断に合わせ歯科検診にも行っている。検診は面倒がる方もいるが、欠かさず受けるようにしている。健康診断もさることながら、歯科検診は苦手な人も多いのではないか。今年の私の歯科検診では、早急に治療すべき歯はなく、若干の手入れでよいというので、ともあれ歯科医院に行った。
不思議なもので、痛みを感じるはずがないケアでも何となく痛い。キーンというエアタービンの音が痛みを思い出させるのだ。インターネット等で検索すると、「歯科医のキーンという音が苦手だ」「怖い」などという記事が山のようにでてくる。学術的にも、この音と痛みの関係について研究した論文も多く、大変面白い。痛みは脳で感じているのだから、自分である程度はコントロールできないものなのか、と考えたくなる。ある論文では、人は経験によって痛み耐性も変化するらしく、子どもと比較して、大人は「キーン」を治療中の害のない音と認識できるようになるためか、無関心でいられるようになることもあるらしい。訓練である程度自分の痛みをコントロールができたら、不快感も減るのではないかと考えた。
さて、歯科診療にはご存じのとおり、保険診療と自費診療がある。例えば、矯正やインプラントは審美的な治療と見なされ、原則自費診療となる。現在の日本の歯科治療の現状と保険診療制度によるので、なかなか物言いができないのが残念である。歯科医師の営業努力も大変らしい。80歳でも20本(以上)の自分の歯で元気においしく食べられるということは生きることそのものであり重要だが、同時に年齢にかかわらず、人とのコミュニケーションをする上で、丈夫な歯とスマイルのために、自費診療と保険診療の壁が少しでも低くなってくれたら、と考えてしまうのはわがままだろうか。(こゆ美)