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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】南イタリアで味わう海の幸

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 イタリア南部、プーリア州の古都レッチェ。1689年に完成した大聖堂に近い路地を歩いている時に、1軒のこじんまりしたレストランが目についた。店名はラ・ティポグラフィア。ベージュ色のレッチェ石を使った古建築の1階である。予約もしていなかったが、人なつこそうな店員が笑顔で迎えてくれる。こういう暖かみのある仕草が、ドイツとは違う。
 イタリアの特徴は、地方ごとに食事が千差万別であり、郷土色が強いことだ。1861年に統一されるまでの長い間、多くの共和国が群雄割拠していた国なので、無理もない。
 プーリア地方では、オレキエッテという耳たぶのような形をした、丸いパスタが頻繁に食卓にのぼる。オレキエッテは、イタリア北部ではめったに出てこない。プーリア地方にも長いパスタがあるが、北部よりも太目で、日本の饂飩(うどん)のような印象を与える。キノコを混ぜた濃厚なソースのパスタは、コシがあっておいしい。
 イタリア南部に来たら、海の幸を味わうために海岸地帯に行こう。レッチェから北東に車を15分も走らせると、紺碧のアドリア海が見えてくる。対岸はアルバニアだ。サン・カタルドという、名もない村に着いた。
 ここにポルト・アドリアーノというレストランがある。ここの名物は海産物である。入り口には、その日お勧めの魚介類が並べられている。アドリア海に面した地域では、「紫エビ」と呼ばれる小ぶりのエビでオレンジ色のソースを作り、イカやタコ、ムール貝、アサリなどと混ぜたパスタをよく見かける。
 隣のテーブルでは、中年の太ったイタリア人男性3人が、昼間から白ワインをグイグイ飲み、生ガキを次から次に平らげていた。貝殻の山がどんどん高くなっていく。彼らの長いランチの締めは、海産物を散りばめたリゾットの大皿だった。すごい食欲である。
 レッチェから今度は南へ向けて車を30分走らせると、ガリポリというイオニア海に面した港町に着く。岸壁に沿った細い道を歩く。海岸に面したイル・バスティオーネというレストランを見つけた。12月最後の週だったが、気温は20度。日なたではコートが要らないくらいの暖かさだ。日差しを浴びながら、紫エビを使ったパスタ、そして生のマグロに挑戦。カルパッチョは、マグロにオリーブ油と塩で味付けしたイタリア風刺身だ。最近イタリアの海沿いの地域では、生の魚介類を食べさせる店が増えている。日本料理ブームの影響だと、私は確信している。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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