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うず

【うず】私失敗できないので

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 「私失敗しないので」―これは、往年の大ヒット医療ドラマの主人公である女性外科医の決め台詞(きめぜりふ)だ。これと似て非なる「私失敗できないので」発言をしているように思えてならないことがあった。大学新入生を対象とするコラム子の講演の後、質疑応答のやり取りでのことだった。
 聴講生から、「先生や友人からの質問に百パーセント明瞭な回答をする自信がない。自分から質問や意見を言うのも反論論破されるのが怖い、委縮してしまう。だから積極的に発言・行動しないようにしてしまっている。どうしたらよいですか」という質問を受けたのだ。つまり、失敗を恐れ「私失敗できないので」とチャレンジと思えることは行わずに、すべてのことに「安全策」を第一に行動している。大学選びもそうだった、今後の大学生活、友人関係構築などもそうなってしまいそうだというのだ。
 講師の知人としてたまたま同席してもらっていた彼らの4年先輩の、この質問に対する回答に心惹かれた。自己の社会人生活の経験を含めていわく、自分も過去そうだったが「みんなは理想がすごく高い気がする」「百パーセントではなく20~30%の程度と思っても発言してほしいと思う」、要は「私失敗できないので」ではなく、「私失敗しますので」と思ってよいのだと言っていたのだ。
 新人研修を終えた若者が配属されてくる。上司、先輩はその扱いが気になるところだろう。経済誌でも「上司や先輩社員のための若手育成法」なる特集が組まれていた。波風を立てないために協調するのではなく、単に周囲に同調しているだけの若人の育成には、基本的な「私失敗できないので」意識の払拭が第一だと思う。(朗進)

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