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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】欧州でも6月に異常熱波

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 「地球はどうなってしまったのか」と思わずにはいられない、今日この頃の天候である。今年6月には日本だけではなく、欧州も記録的な猛暑に襲われた。6月29日にはスペイン南部のエル・グラナードという町で、46度という気温が観測された。6月にスペインで観測された最高の気温だ。
 フランス、ギリシャなどでも40度を超える気温が観測され、フランスのマルセイユ周辺では山火事による深刻な被害が発生した。
 私は1990年にミュンヘンに住み始めた。それ以来ドイツの気候も大きく変わった。35年前には、30度を超える日は8月に数日ある程度だった。それが今では、2カ月も早い6月に気温が30度を超えるようになった。今年の6月には連日晴天が続き、雨が少なかったので、一部の木の葉が黄色くなり、散り始めた。
 ドイツ気象台によると、この国では1960年から90年の年間気温の中間値は8.2度だった。この中間値と年間平均気温の差は、21世紀に入ってから広がっている。例えば、2024年の年間平均気温は、1960年~90年の気温の中間値よりも2.7度高かった。
 実はドイツには、クーラーがある家庭はほとんどない。35年前には気温が30度を超える日は数えるほどだったので、冷房は必要なかった。また、ドイツの集合住宅は壁がれんが造りで分厚いので、日本のように簡単に室外機を取り付けることができない。分譲集合住宅では、クーラーを設置するために壁に穴を開けることは、建物の構造を変えることになるので、所有者全員の賛同が必要である。
 私が住んでいるアパートにもクーラーはない。ドイツの住宅は冬に暖房効率を高くするために、窓の密閉性が高くなっている。このため、夏には暖かい空気が住宅の中にこもってしまい、相当暑くなる。日本に比べると湿度が低いとはいえ、気温が30度を超えると、原稿を書いていても頭がボーッとする。移動式のクーラーを買ったが騒音がひどく、涼しいのは機械から30センチ以内の範囲だけだ。
 欧州は、気候温暖化の影響が世界で最も顕著に現れている地域の一つである。例えば、ゲリラ豪雨が増えている。地中海の水温が上昇しているため、雲が水蒸気を多く含んで陸地に移動して大雨を降らせ、洪水や鉄砲水を引き起こす頻度も増えている。
 ドイツの気候学者モジブ・ラティフ氏は、「現在われわれが経験しているのは、気候変動による極端な猛暑。全世界の二酸化炭素の排出量は増えているので、気候変動は今後さらに深刻になる恐れがある」と警告している。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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