コンテンツ
- ホーム
- 保険毎日新聞コンテンツ
- 連載コラム新ヨーロッパ通信
【新ヨーロッパ通信】移民をめぐる議論の混乱(下)
今日のドイツ経済・社会は、外国人または帰化した外国人なしには成り立たない。ドイツ政府によると、2023年のドイツの人口8390万人のうち、外国人または帰化した外国人の比率は29.7%(2490万人)だった。住民の3分の1近くが、外国系の住民なのだ。
私が住むミュンヘンのようにグローバル企業が多い大都市では、人口に外国人または帰化した外国人が占める比率が、24年末の時点で49.5%に達している。この町にはBMWやシーメンスなど大企業の本社が多く、ITに強いインドからの移住者の数が最近目に見えて増えている。ドイツの大学を卒業したドイツ人だけでは、人材が足りないのだ。
私はドイツに35年前から住んでいるので、さまざまな人種、さまざまな文化圏の人々が共生しているのに完全に慣れてしまった。私の住んでいるアパートにも、ドイツ人だけでなく、カナダ人、ノルウェー人、インド人、ルーマニア人、イタリア人、フランス人などいろいろな国の人が住んでいる。
これに対し、法務省によると、24年末に日本に住んでいた外国人の数は約377万人。24年までに日本に帰化した外国人の数は約61万人で、合計438万人となる。総務省によると、24年10月の時点で日本の人口は約1億2380万人。つまり、日本の人口に外国人と帰化した外国人が占める比率は3.5%となり、ドイツのほぼ8分の1だ。
私は、高齢化と少子化がドイツ同様に急速に進んでいる日本でも、経済水準を維持するには、真面目で勤勉な合法的移民の受け入れ数を増やす必要があると考えている。日本国外では、各国間で優秀な頭脳、勤勉な人材をめぐる競争が激しくなっている。
こうした中で、外国人の受け入れ規制を求める風潮が強まると、日本が優秀かつ勤勉な合法的移民を増やす上で、プラスにはならない。「外国人に対する生活保護の給付をやめるべきだ」とか、「外国人による不動産の購入は制限するべきだ」という意見が強まった場合、日本経済が必要とする優秀な人材は、この国で働きたいと思うだろうか?
ちなみに、私が住んでいるドイツでは、外国人でも生活保護を受けられる。ドイツ人だけではなく、外国人にも最低限の生活を営む権利が認められているからだ。また、ドイツでは、外国人がアパートや土地を買うことも制限されていない。
私は日本のメディアや政治家に対して、わが国の経済的水準と社会保障制度の維持、人権の尊重などの長期的な国益を視野に入れながら、外国人についての議論を慎重に行ってほしいと考えている。
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92