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【新ヨーロッパ通信】ガザ停戦後も問題は山積
ようやく戦火がやんだ。今年10月10日、イスラエルのネタニヤフ政権と、ガザ地域を実効支配しているテロ組織ハマスの間で停戦が発効した。ハマスはイスラエル人の人質20人を解放し、イスラエルは刑務所から約2000人のパレスチナ人戦闘員らを釈放した。米国のトランプ政権がネタニヤフ首相に強い圧力をかけたことと、カタールやトルコなどイスラム教徒が多い国々がハマスを説得した。イスラエルを支援する国の中で、最も支援額が多いのは米国だ。強硬派として知られるネタニヤフ首相も、トランプ大統領の和平提案を拒絶することはできなかった。
2023年10月以来、約2年間続いた戦争の終結は喜ばしい。しかし、パレスチナ問題の根本的な解決への道はまだ遠い。
最優先の課題は、荒廃したガザの復興である。イスラエル軍の攻撃は、ガザに甚大な人的、物的被害を与えた。国連人道問題調整事務所によると、10月1日までに死亡したガザ市民は6万6000人を超え、負傷者の数は約17万人に達した。死者のうち、約1万8000人が子どもだ。国連をはじめとする国際社会は、約2年間にわたり、「天井のない牢獄」と呼ばれるガザ市民が虐殺されるのを拱手傍観した。
欧米諸国とイスラム諸国はガザに治安維持部隊を派遣して、イスラエルとハマスに停戦を守らせなくてはならない。最も難しいのは、テロ組織ハマスの武装解除だ。今回の停戦合意の条件の一つは、ガザにハマスが関与しない新しい統治機構を作ることだ。これは事実上ガザからのハマス排除を意味する。ハマスがあっさりと武装解除を受け入れるかどうかは未知数だ。
ガザ戦争の口火を切ったのは、23年10月のハマスによる大規模なテロ攻撃だった。この攻撃で、イスラエル市民ら約1200人が殺された。パレスチナ人の死者に比べればイスラエル側の死者は少ない。しかし、イスラエル人にとって23年のテロは、第二次世界大戦中にナチスが行ったユダヤ人虐殺(ホロコースト)に次ぐ大惨事だった。ユダヤ人が安住の地と考えたイスラエルで、多数の市民が自宅でテロリストに追い詰められて虐殺されたことは、この国を変えた。
私はイスラエルを11回訪問して、この国と市民について若干の知識がある。イスラエル軍のガザでの振る舞いは、単に人質解放のためではなく、10月7日事件への復讐に見えた。
ガザ戦争で、パレスチナ人のイスラエルに対する憎しみはさらに深まった。残念ながら両者の間の流血の連鎖は、今後も続くだろう。
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92
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