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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】ドイツ自動車見本市の主役はBEV

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 ミュンヘンで9月9日から6日間にわたり、自動車見本市「IAAモビリティ」が開かれた。会場では、中国企業の欧州市場への関心の強さと、ドイツ企業が中長期的に電気自動車(BEV)を中心に置こうとしていることが感じられた。
 IAAは2021年以来、2年おきにミュンヘンで開かれ、今年は53万人が訪問した。以前のフランクフルトでの自動車見本市では、車が見本市ホールだけに展示された。これに対しミュンヘンでは、ホールでの展示だけではなく、市内の中心部の道路を閉鎖して「オープン・スペース」という展示場を設置し、市民が誰でも最新の車に触れることができるようにした。私が訪れた時も、雨交じりの悪天候にもかかわらず、子どもを連れた夫婦など多くの市民が会場を訪れていた。
 37カ国から約750社の自動車メーカーやサプライヤーなどが出展したが、最も多かったのが中国企業で116社。中国企業の欧州市場への積極的なマーケティング攻勢を印象付けた。中国のBYDはひときわ目立つ大きなスタンドを設置し、多数の訪問者を集めていた。BYDの今年5月の欧州での販売台数は約7100台とまだ少ないが、前年同期比で115%増えた。ドイツの路上でも時折同社の車を見かけるようになった。小鵬汽車(シャオペン)、零ほう(足へんに包)汽車(リープモーター)などドイツではほとんど知られていない企業もBEVを展示した。
 これに対し、日本からは部品メーカーが数社参加しただけで、自動車メーカーは参加しなかった。日本のハイブリッド車はドイツで好評であるだけに、不参加を寂しく感じた訪問者もいた。
 ドイツのメーカーの展示の中心もBEVだった。BMWは充電能力400キロワットのSUV・iX3、メルセデスベンツが充電能力330キロワットのSUV・GLCを発表した。フォルクスワーゲン(VW)グループも、新車価格2万5000ユーロ(425万円、1ユーロ=170円換算)のIDポロなど4種類の新型BEVを発表。IDポロは、同社で最も割安のBEVだ。
 VW乗用車部門のシェーファー社長は、「欧州の脱炭素化には、BEVが不可欠だ」と述べ、同社が今後もBEVに力を入れる方針を強調した。
 ドイツの大手自動車メーカーは、今年上半期にトランプ関税の影響や中国市場での不振、過剰な生産能力などのために、大幅な減益を記録した。このため、各社とも従業員数の削減や不採算部門の閉鎖など経費節減に追われている。今回のIAAでドイツ企業は、新製品の発表によってイノベーション力を誇示し、業界に漂う重苦しい雰囲気を吹き飛ばそうとしているように見えた。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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