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【新ヨーロッパ通信】ユーロ高と円安はどこへ行く?
今年10月初旬以降、円安が加速している。10月8日には、一時1ユーロが約177円になった。私がドイツに来た1990年には、1マルクは約50円だった。当時に比べると、ドイツはわれわれ日本人にとって本当に「高い国」になった。
ユーロが導入された当初は、100ユーロ紙幣が1万円札、10ユーロ紙幣が千円札のような感覚だった。だが、現在の為替レートでは、100ユーロは1万7700円、10ユーロは1770円である。
逆に1万円札の価値は、ユーロ圏では56ユーロ。つまり、価値が半分になってしまうような気がして悲しい。
高くなっているのはユーロだけではない。欧州の他の国の通貨も円に対して高くなっている。1スイスフランは約189円、1ポンドは202円だ。これでは、日本から欧州へ旅行する人の数が減る。パリでそこそこのホテルに泊まろうとすると、1泊当たり300ユーロはかかる。これは5万3100円だ。日本には富裕層向けの欧州ツアーを提供している旅行会社があるが、最近は裕福な人々も、値段の高さのために欧州を敬遠するようだ。ある会社が欧州豪華ツアーを企画したが、応募者が少なかったために立ち消えになったという話を聞いた。
欧州に事務所を持っている日本企業は、ユーロ高のために、円に換算するとコストが高くなって苦労していると思う。
逆に外国から日本に旅行する観光客の数は、今後さらに増えるだろう。2024年の外国人訪問者数は過去最高の約3687万人だったが、今年は9%増えて約4020万人に達すると予想されている。最大の理由は、円安による価格の安さだ。1泊5万円のホテルも、ドイツ人にとっては282ユーロだ。
例えば、吉野家の牛丼の値段を498円とすると、ユーロ換算で2.8ユーロになる。ドイツでは、2.8ユーロで温かい食事はとれない。最も安い屋台のデナー(羊や鳥の肉を円筒に固めて焼いたものを包丁でそぎ落とし、中東風のパンにはさんで食べるファーストフード)でも、5ユーロ(885円)は取られる。
もちろん円安には良い面もある。日本の輸出産業にとっては、価格競争力が高まって輸出をしやすくなる。
だが、円安が長引くと、国内の物価高騰に拍車がかかる。日本の24年の食糧の自給率はカロリーベースで38%と、G7加盟国の中で最も低かった。つまり、多くの食品が外国から輸入されているので、円が弱くなると値段が高くなる。
一刻も早く安定した政府を発足させ、為替対策・物価対策を取る必要があるのではないだろうか。
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92
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