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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】イタリア人もびっくりのスペイン人気質

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 スペイン人は、見知らぬ人に対しても笑顔を忘れない。バレンシアの商店や喫茶店、公共交通機関の窓口などの人々は、アジア人の私に対しても笑顔で対応してくれた。私が住んでいるドイツでは、笑顔も見せず、「私の仕事の邪魔をするな」と言わんばかりの対応をされることが多いので、スペインに来るとほっとする。私はギリシャにも約10回出張したが、ギリシャ人も笑顔で対応する。南欧に共通の態度なのかもしれない。
 だが、この親密さが過剰に感じられる時もある。ドイツ人の会社員Aさんは、マドリード支店で数年勤務した。彼はスペイン語が堪能である。ドイツでは初対面の人など、あまり親しくない人とは「あなた(ズィー)」、家族や友人など親しい人には「おまえ(ドゥー)」を使う。Aさんがマドリード支店に着いた瞬間から、同僚とは「あなた」ではなく「おれ、おまえ」だった。ドイツ人としては、まずこの「距離感の近さ」に驚く。週末に独りでゆっくりしようと思っていると、同僚が「週末はどうするの?どこかへ遊びに行こうよ!」と誘ってくる。もちろん親切心からであるに違いない。
 しかし、個人主義が強いドイツでは、プライベートな時間を大事にする人が多い。Aさんも、「スペイン人の親切さは有難かったけれども、ちょっと疲れた」と言っていた。彼は日本にも数年間滞在したことがあるが、「日本人の方が、プライベートな生活からは距離を取ってくれるので、スペインよりも気が楽だった」と話していた。
 イタリア人のBさんは、スペインのある町が気に入って、分譲アパートを探していた。彼は地元の不動産仲介業者と、物件を見学するために建物の前で待ち合わせた。不動産仲介会社から来たスペイン人の女性は、Bさんに会うなり、Bさんを抱き締めて、頬と頬を近づけて唇で「チュッ」と音を立てるチーク・キスをした。
 Bさんは強いショックを受けた。この不動産ブローカーとは初対面だったからだ。イタリア人の間の距離感もドイツ人に比べると短いが、チーク・キスをするのは親しい友だちや家族だけ。初対面の、しかもビジネス関係の相手にチーク・キスはしない。イタリア人ですら「なれなれしい」と思うのだから、スペインの人間関係は南欧でも特に「濃い」のだろう。
 一口に欧州といえども、これだけ千差万別の習慣があるのは、興味深いことだ。この文化や慣習の多様性、そしてさまざまな発見が、私にとっては欧州の魅力である。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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