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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】ウィーンの味覚

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 オーストリアの首都ウィーンで最も有名な教会は、聖シュテファン大聖堂だ。約100メートル北東にヴォルツァイレと呼ばれる路地があり、紅茶の販売店などが軒を連ねている。
 この路地には、ウィーンで最も知られたオーストリア料理店「フィグルミュラー」がある。1905年に開業したこの店の自慢は、豚のカツレツである。豚肉を木づちで叩いて薄くしたものにパン粉を付けて、フライパンで焼く。レモンを絞って食べる。付け合わせは主にポテトサラダ。それほど凝らない庶民の料理だ。値段は約21.9ユーロ(1ユーロ=180円で計算すると3942円になってしまうが、現地の感覚では2190円だ)。
 ウィーンでカツレツと言うとフィグルミュラーの店が最も有名で、市内の9カ所に店がある。予約しないと座れないほどはやっている。12月の寒空の下、店の前に立って順番を待っている人がたくさんいた。
 欧州の料理に詳しい人ならば、ヴィーナー・シュニッツェルという言葉を聞いたことがあるだろう。ウィーンのカツレツという意味だが、現地では子牛の肉を使ったものだけがヴィーナー・シュニッツェルと呼ばれている。
 フィグルミュラーの店のように豚肉を使ったものは、ヴィーナー・シュニッツェルではなく、「ウィーン風カツレツ(シュニッツェル・ヴィーナー・アルト)」または「豚肉のヴィーナー・シュニッツェル」と呼ばれる。豚肉のシュニッツェルの方が、子牛の肉を使ったものより安い。
 ウィーン風カツレツは、オーストリアの1831年の料理本に言及されており、19世紀ごろから有名になったようだ。イタリアのミラノ風カツレツを、オーストリアの軍人が祖国に伝えたという話があるが、これは眉唾の「都市伝説」のようだ。
 もう一つ、オーストリアで人気のある料理の一つがグーラッシュ。これは元々牛の角切り肉やピーマンを入れたハンガリーのシチュー料理で、クネーデルと呼ばれる団子を付け合わせにして食べる。底冷えがする冬のウィーンでは、グーラッシュが身体を温めてくれる。
 オーストリアは、デザート王国でもある。パラチンケンと呼ばれる薄いパンケーキも人気がある。クリームやレーズン、チョコレート・クリームなどを包み、外側に粉砂糖をまぶす。アプフェルシュトゥルーデルと呼ばれる焼きりんごの入ったケーキに暖かいバニラ・ソースをかけたものも、ウィーンの喫茶店には欠かせない。一度この古都の路地を歩いて、オーストリア伝統の味を探索されてはいかがだろうか。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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