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新ヨーロッパ通信

日本がんばれ

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 近頃、気になることがある。日本経済は、さまざまな分野で他国に負けている。産業界の衰退が感じられる。技術革新力が落ちているからだ。このことは、日本国内よりも、外国で見ている方がよくわかる。
 例えば、今日スマートフォンは生活に欠かせない必需品である。だが、米国、韓国、中国製が牛耳っており、日本の影はない。負けているのはスマホだけではない。30年前にドイツの家電販売店に行くと、日本のテレビ、冷蔵庫、掃除機などがたくさんあった。今では韓国、台湾、中国の製品が中心で、日本の製品はほとんど見られなくなった。
 欧米では、将来の車の主流はバッテリーだけを使うBEVになっている。2035年以降、ハイブリッド車も含めた内燃機関車の新車販売は禁止になる。ドイツでは、政府と自動車業界が一丸となってBEVの普及を推し進めている。日本は出遅れた。新たな「産業のコメ」特殊半導体の世界でも、リードしているのは台湾や米国。日本企業は水を開けられた。
 新型コロナワクチン開発競争で日本は敗北した。以前から欧米諸国はmRNAワクチンを重視し、基礎研究に助成していた。このため、ドイツ、米国、英国はパンデミックが起きてから1年足らずでワクチンを開発できた。日本政府はmRNAワクチンの重要性を認識せず、この研究を助成していなかった。
 韓国、中国、台湾の方が日本よりもグローバル化に積極的だ。日本はグローバル化・デジタル化が遅れている。JRのウェブサイトでは、乗車の1カ月前にならないと切符を予約できない上、深夜・早朝には切符の検索ができない。原則として、オンラインでEチケットを買えない。ドイツやフランスでは24時間、自宅で切符を印刷したりスマホにダウンロードしたりできる。外国で作ったクレジットカードが使えないこともある。
 労働時間や有給休暇に関する日本の労働条件は、欧州に比べて悪い。有給休暇の消化率はドイツの半分である。年間賃金水準は韓国よりも低い。欧州の一部の国では、賃金水準の上昇に合わせて公的年金の支給額を増やしている。日本では、国民年金の支給額が逆に減らされている。これでは、外国の優秀な頭脳、人材は日本に集まらない。彼らは、賃金や労働条件が日本よりも良い国に行ってしまう。
 23年は、日本の針路を大きく変えるべき年なのではないか。これから生まれてくる、日本の子どもたちのために。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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