対面耐性
(うむ、9割をきっているか…)外出先で思わずマスク装着率を目で追うのもばかばかしいのだが、この習慣もいつになったらなくせるのだろう。3年超の自粛生活で染みついた負の生活スタイルを変えるのは容易ではない。そんな自問自答をしながら、先日、大学の大講堂で講義を行った。この大学では年2回、働き方について講義をしている。外資系企業で働いてきた気付きを大学一年生に共有させていただく格好だ。
この大学も自粛期間を耐え、一時期はおそらく開講も危ぶんだだろうが、オンラインで継続、ハイブリッド型講義とアレンジしながら、学びを止めずにやってきた。現在もハイブリッド型講義だが、約3分の2の学生たちが教室へ戻ってきた。教壇から眺める学生の姿や、教室のざわめきが大学の生き生き感を感じさせ、教室の後ろ半分に学生が座っていることを除けば、教授には申し訳ないが、個人的にはうれしかった。
しかし、大学生はリアルではなかなか発言しない。外資系的な直接質問を投げ掛け会場をちらと見るが、どうも反応が少ない。コロナ前でも前列に座る数人以外は受け身だったとは言え…。「おーい、教室のみんな、どう思う?」とあおってみても、やはり静かだ。講義前のあのざわめきはどこへ行った?講義が面白くなかったかと反省していたら、一人の学生が自分の将来について意見がほしいと、後で質問にきてくれた。
ここ数年間、学校に登校する機会が少なく、学生たちは対面が得意ではない。日常は取り戻しつつあるが、大学講義という場になると、とたんに静かになってしまう。私はこれを勝手に「対面耐性がない」と称している。大学生たちよ、恐れず意見を持って発言しよう。互いに学びあって成長する場が大学なのだから、意見の相違は当たり前、貪欲に行こうじゃないか、と思いつつ大学を後にした。(こゆ美)