うず
現場のわかる人事課長
以前本欄でも「現場のわかる学者」として話題にさせていただいたY教授のご紹介で、全国の大学で「リスクと保険」を学ぶ学生たちの研究発表会に出席した。学生たちの研究発表はそれぞれユニークで、そのリスクというものに対する発想の多様性に大いに刺激を受けることとなった。
中でも、就職に係る諸事をリスクとして認識するとともに分析し、「就活中におけるインターンシップではどのように業界・会社を選ぶのか、募集要項をどう信じるのか、といったリスク、就活後ではブラック企業に就職してしまったリスク」の原因と対応についての発表には考えさせられた。そして①決められた正解がない②志望会社への周囲の評価がよくわからない③自分の何を評価されているのかわからない―などといった学生たちの不安を再認識することになった。
終了後の懇親会で、同席した業界某社人事部の採用担当責任者と学生たちとの会話にも興味深いものがあった。無論、採用合否など生々しい話題が交わされていたのではなく、保険業界の仕事に関して自身の経験を踏まえてわかりやすく話をし、業界を選択肢の一つに加えてみる場合のヒントを与えていたのだ。学生たちも質問を交えて熱心に聞いていた。
氏は本社部門一筋のいわゆる「人事マン」ではない。最近まで第一線の現場で、直接顧客に対応していた方だ。つまり、「現場のわかる人事課長」が出席されていたのだ。ご本人は「自分のような職歴の人間が突然配属され、採用職務に向いているのだろうか」などと謙遜されていたが、同社が来年の業界の採用に旋風を巻き起こすのではないかとの予感を感じながら、氏の話を聞いていた。(朗進)