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リスキリングで新たな高みへ~三井住友海上

本特集では、リスキリング(職業能力の再開発、再教育)によって社内外に活躍の幅を広げている人物を紹介する。今回は、経理部に所属していた4年間学習を続け、投資のプロフェッショナルとして、金融や投資分野の証券分析、および運用アドバイスにおいて世界的に認められる資格「米国証券アナリスト(CFA)」を取得し、今年の4月から希望していた市場運用部門へと活躍の舞台を移した田張雅明(たはら・まさあき)氏に話を聞いた。
三井住友海上 田張雅明 氏
世界的な投資のプロ、CFA取得

市場運用部
将来的には米MSR社での勤務も視野に
自分なりの武器を持つために
もともと大学で経済学を専攻し、資産運用について強い関心を持っていた田張氏だが、2016年の同社入社後は商品部に所属し、保険事業を基本から学び商品知識を蓄える日々を送った。商品部で4年間勤めた後は、大学での学びを生かせる経理部に所属したが、当時から「将来的には会社の資産運用に携わりたいと考えていた」と振り返る。
その思いを実現させるためには何が必要かを考え、自分なりの武器を持つべきという結論に達した田張氏は、経理部配属直後からCFAの取得を目指すようになる。平日は勤務を終えて帰宅してからの1~2時間、土日は4~5時間を勉強に費やすというルーティンを約4年間続け、昨年、晴れてCFAの最高難度レベル3(注)を取得した。
CFAの試験は、会計・財務分析、オルタナティブ投資などに関する専門知識はさることながら、出題・解答が全て英語で行われるため、英語力が必要となる。田張氏は義務教育の時期から高校、大学で一般的な英語教育を受けた以外は特に英語を学んでいないが、初めてCFAを受験するよりも1年以上前にTOEICを受験しており、その頃に市販のテキスト、聞き流しのCD教材などによって独学で高めた英語力で対応した。
また、CFAの取得に直結する専門知識については、CFA協会が受験者に交付しているテキストを読んだり、市販の参考書を読んだりして対策を練った。試験3カ月前くらいの直前期には、週に1回は模擬試験を受け、長時間にわたる試験に耐え得る集中力の向上と苦手分野の把握・克服に努めたという。
田張氏は4年間かけてCFAレベル3合格を勝ち取ったが、レベル2と3、それぞれで2回不合格を経験している。当時について、「強い不安を感じていた。それでも、30代になって未経験の分野を『やりたいです』と言ってただ手を挙げても通用しないだろうと思っていたので、それ相応のステータスを得るにはここを乗り越えるしかないと覚悟を決めて机に向かっていた」と話す。
挑戦できる環境の中、刺激的な日々を過ごす
現在田張氏が所属する市場運用部では、顧客から預かった保険料を効率的かつ安全に運用し、収益を上げるために、国内外の株式、債券をはじめとした多様な資産に投資してリスクとリターンの最適化を図るなど、さまざまな投資戦略を実施している。基本的には会社として月ごとに目指すポートフォリオが決められており、そこに向けての投資が部門の方針に従って行われる。
ただ、一定のリスクまでなら個人の機動的な判断に基づく資産運用も許されている。第二次トランプ政権の方針の不透明性などから、最近の相場は荒れているとした上で、「上司からは、一つ一つの取り引きで損を出してしまっても責任を感じ過ぎる必要はない。こういう信念を持った上で投資行動をしたと、しっかり言えるような判断をしていきなさいと言っていただいている」と述べ、自身のチャレンジを後押ししてくれる職場環境だと話す。
巨額の資産を動かし、その判断の良しあしが一瞬で決まる同部門の業務について、田張氏は「配属されて間もないが、毎日学びがあって刺激的だ」と話す。また、その中でもアナリスト的な視点を持って働けることに強いやりがいを感じるとし、会社が目指すポートフォリオの実現に向けて、どの銘柄へ投資するのかといった目利きの部分でも貢献していきたいと意欲を示す。ただ、経験に基づく感性、現場で得たデータの蓄積がものを言う世界だとも述べ、「今は知識だけでは通用しないことを痛感している。ここから積み上げていきたい」と先を見据える。
同社では、外国資産運用力のさらなる強化に向けて、スイスの資産運用会社であるLGT Capital Partners Ltd. (LGT社)と共同で、MSR Capital Partners, LLC(MSR社)を米国ニューヨーク州に設立している。プライベートエクイティ投資を中心に資産運用業務を行うMSR社では、投資対象となる企業へのヒアリングを実施し、財務状況、プロジェクトの内容などからリスク評価を行うこともある。現在、市場運用部からも数人がMSR社に出向しているが、田張氏もいつかはCFAの資格を生かして同社に出向し、そうしたヒアリングのスキルも磨いていきたいと語っている。
(注)米国証券アナリスト(CFA)の資格認定試験は3段階の難易度があり、レベルが上がるごとにより専門的な知識が問われるようになる。レベル3が最高難度。レベル1からスタートし、下のレベルに合格することで次のレベルの受験が可能となる。

