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【保険毎日新聞社 創刊80周年記念特集】〈対談〉広がる自動運転の可能性 レベル4普及が地域交通の課題解決に キーワードは「移動そのものの体験化」

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【保険毎日新聞社 創刊80周年記念特集】〈対談〉広がる自動運転の可能性 レベル4普及が地域交通の課題解決に キーワードは「移動そのものの体験化」

特定条件下で無人運行を可能にする自動運転レベル4の開発が、今世界各国で活発に進められている。日本政府も2027年度までに全国100カ所以上でのレベル4の移動サービス実現を目標に掲げ、普及に力を入れている。本記事では、自動運転車両メーカーの新興企業ピクセルインテリジェンス(ピクセル社)と、自動運転技術の社会実装や地域交通の課題解決を研究するSOMPOインスティチュート・プラスの研究員による特別対談を通じ、自動運転の現状と未来を探った。議論は、地域交通の課題からレベル4普及を後押しする政府の動き、さらに観光・物流など新たな領域への自動運転の展開可能性にも及んだ。

(左から)劉氏、高橋氏、新添氏



SOMPOインスティチュート・プラス㈱ 研究部 シティ・モビリティ領域 上級研究員
新添 麻衣 氏

ピクセルインテリジェンス㈱ 営業&企画部本部長
劉 東 氏

ピクセルインテリジェンス㈱ 営業&企画部 営業担当
高橋 信二 氏





政府もレベル4普及を後押し



高橋 はじめに、当社ピクセルインテリジェンスの紹介をさせていただきたい。当社は自動運転車両のメーカーであり、同時に自動運転システムの提供も手掛けている。中国・貴州省に本社を置くスタートアップPIX Movingと、日本の総合ITサービス企業のTIS㈱との合弁により生まれた、グローバル展開を見据えた日本拠点になる。新添さんと自動運転の社会実装を語る上で、鍵となるのはやはり「レベル4」になるだろう。

新添 自動運転にはレベル1~5までの段階があり、最も高度なレベル5は「海でも山でも緊急事態でも一切の制約なく車両が自動運転する」状態を指すが、これは概念上存在するものの実現のハードルは極めて高い。現在世界的に開発の主戦場となっているのはその手前のレベル4だ。レベル4では走行可能なルート・エリア、時間帯、天候といった何らかの条件、いわゆるODD(運行設計領域)が付くものの、その限定条件下においてはプロドライバーが同乗せずとも無人運行サービスを提供できる。レベル4が実現すれば、ついにバスやタクシーは乗客だけを乗せて走る世界がやってくるわけで、そのインパクトは大きい。特に日本は高齢者の移動手段確保や深刻化するドライバー不足へのソリューションとして、レベル4普及に期待が寄せられている。政府も2025年度までに50カ所程度、27年度までに100カ所以上でのサービス実現を掲げ、補助金拠出など積極的に後押ししている。

 政府によるレベル4普及への後押しを受け、当社でも社会実装に向けた開発を着実に進めている。当社の電気自動車(EV)車両の特徴は、シャーシ(車台)部分と上物のキャビン部分を切り離せるモジュール設計となっている点で、インバーターやモーター、バッテリーなど主要コンポーネントを車台に組み込んだ独自構造になっている。そのため、センサーや制御用ハードからソフトウエアまでを自社開発できる点が私たちの強みだ。

新添 日本国内の他の自動運転車両を見ると、例えば国内メーカーの日野やいすゞ、あるいは中国のBYDなどの既存車両を購入し、頭脳に当たるソフトウエアは別企業の製品を載せるというパターンが多い一方で、貴社は車両そのものの設計・製造からソフト開発までを一気通貫で行う珍しいメーカーだ。その強みはサービス展開時の対応力にも現れるだろう。例えば不具合が生じた場合には、自社でハード・ソフト両面を把握しているため原因の切り分けが迅速で、かつ海外メーカー製だとエンジニアへの確認に時間を要するリスクもあるが、国内拠点があることで素早いアフターサポート体制を築くことができる。



試乗会を通じ地域のニーズを実感



新添 今年7月、貴社では神奈川県茅ヶ崎市の道の駅で自動運転EVバスの試乗会を開催したと聞く。

高橋 メディア、市役所関係者、近隣住民の方など、2日間で延べ350人以上に試乗いただいた。これまで、デザイン性にもこだわった当社車両の車内空間を活用し、東京都千代田区の丸の内仲通りや沖縄県名護市のリゾート施設などで、移動販売PoCを兼ねたプロモーションを行ってきたが、今回の試乗会は過去最多の参加人数となった。

 実際に乗っていただいた方々からは「早く公道で走ってほしい」という声も多く、地域の足として期待されていることを強く実感した。



茅ヶ崎市のイベントでは350人以上が試乗した



東京・丸の内でのプロモーションの模様



新添 コミュニティバスやローカル路線バスは利用者が少ないほど本数が減り、本数が少ないと不便になってさらに利用されなくなるという悪循環に陥りがちで、日本中で地方バス路線の減便・廃止が相次いでいる根底には、この問題がある。実はバスの利便性を左右するのは本数、つまり運行頻度の高さだ。欧州では公共交通を税金で支え高頻度のダイヤを維持するのが常識となっているが、日本は長年、バス事業を民間任せでやってきたため公的支援が手薄で、そのツケが今回ってきている。そこで期待されるのが自動運転の導入だ。車両が無人運行できればドライバー不足の地域でも運行本数を増やすことが可能となり、現状の悪循環を断ち切る大きな力になり得る。また、自動運転化できるバス路線が増えれば、地域のプロドライバーのリソースに余剰が生まれ、その人材を他の路線に充当できる。地域全体のリソースの再配分で、公共交通網の維持にもつながる。

高橋 ただ、地域の課題解決においては技術導入だけでなく、サービスを持続可能に運営していくための仕組みづくりが重要となる。

新添 そこに対しては、SOMPOグループで「SOMPO ALCS」というソリューションを提供している。ALCSは Autonomous Level4 Comprehensive Support の略で、レベル4自動運転サービスを開始し、定着させていくために必要となる周辺サービスをパッケージ化して提供する。例えば、実証実験導入時には走行経路上の走行環境(実勢速度、交差点の見通しや信号配置など)を総合的に調査し、リスクアセスメントを行う。またレベル4の継続運行には、事故発生時などの救急対応を担う遠隔オペレーターによる監視体制が法律上必須となるため、遠隔監視センターの運営を支援することもできる。さらに、センサーが満載の特殊車両のメンテナンスに関わる課題に対しては、整備士育成や認定工場ネットワークの構築などを進めている。「SOMPO ALCS」では、こうした保険以外の周辺支援サービスを必要に応じて自治体や事業者に提供し、人材・インフラ面で自動運転サービスを下支えする。



観光・物流、エンタメへの展開



新添 自動運転車両は地域の足以外にも、さまざまな用途への展開が期待される。

高橋 当社の6人乗り自動運転EVバスは大きなガラス窓を備えており、景色を眺めながら乗車できるため、観光用途に適していると考えている。現在、地方自治体と連携して地域の観光スポットを巡回するルート開拓の企画も進めている。豊かな観光資源があるのにそこが駅や空港と離れているような地域を自動運転シャトルバスで結び、乗客が車窓の景色やガイドを楽しみながら途中下車・周遊できるようなサービスを検討中だ。また物流分野では、過疎地域での買い物難民対策やラストマイル配送へのソリューションとして、自動運転車両を使った宅配や移動販売といった展開を模索している。

 エンターテインメントの領域でも、自動運転ならではのサービスを提供できると考えている。例えば地域特産品の他、当社車両の特徴を生かしてもらい、車内で洋服を販売する、美術品の展示会を開催する、カフェ運営を行う移動型店舗といった運用も考えられる。また、Jリーグなど地域スポーツチームのスタジアム往復シャトルとしても活用できるだろう。そのチームのカラーで車両をラッピングすれば、まちおこしの象徴にもなる。移動そのものを体験化し、乗ること自体が楽しいサービスにできれば、自動運転車両の活用シーンはますます広がっていくだろう。



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