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【保険毎日新聞社 創刊80周年記念特集】MDRT歴代会長・副会長に聞く 生命保険業界とMDRT日本会のこれから

1927年に米国で発足したMDRT(Million Dollar Round Table)の活動は、現在では世界中に広がっている。日本では31年に3人の保険募集人が初めてMDRTに登録され、以来さまざまな困難を乗り越えながら会員数は着実に増加し、現在その存在は業界内外で広く認知されるものとなっている。ここでは、MDRT日本会とその会員がこれまでどのような歩みを重ねてきたのか、そして今後どのような方向へ進むべきかについて、歴代会長経験者2人と現会長・副会長で話し合った座談会の様子をお届けする。それぞれのこれまでの経験から、今後MDRT日本会が果たしていくべき役割まで、活発な意見交換を行った。

左から千葉氏、林氏、尾崎氏、小嶋氏
アクサ生命分会・20年度MDRT日本会会長
千葉 博道 氏
ソニー生命分会・22年度MDRT日本会会長
小嶋 保久 氏
代理店分会・25年度MDRT日本会会長
林 克枝 氏
ジブラルタ生命分会・25年度MDRT日本会副会長
尾崎 志津子 氏
生命保険業界の“羅針盤”として
――生命保険募集人の役割や、募集現場の変化について。
千葉 募集人になったばかりのころは販売する保険商品自体が少なく、シンプルだった。最近はかなり種類が増えてきており、運用志向の高まりもあってお客さまの関心は貯蓄性商品に集中している傾向がある。お客さまのニーズに合わせるだけでなく、必要な保障についてきちんと訴求していかなければならないと考えている。
尾崎 これまでは“入口”、つまり保険の販売と加入がクローズアップされる傾向にあった。しかし高齢化が進む現在は、保険金の支払いが必要な人や保険金を受け取る人の絶対数が増え、お客さまに保険金をどのように届けるかといったことや、届ける時にどう役に立つかなど、保険金支払いという“出口”の質が問われていると感じる。
千葉 販売手法も大きく変わってきている。自社の若い社員では、当社の公式ホームページ上に社外公開されている約款をAIに取り込んでお客さまからの質問にすぐに答えられるようにしている人もいる。ただ、生命保険募集人の基本的な役割は変わっていない。
小嶋 募集人の基本はお客さまのために何ができるかを考えることで、「どうすれば契約してもらえるか」ではなく、「どうすればお客さまを守っていくことができるか」と考え、お客さまの思いに寄り添っていくことだ。
営業の現場に関しては、私が募集人になったころはレートブックを見ながら手計算で保険料を算出し、設計書や申込書を作成していた。そのころから考えると、現在はAIなど含めて環境が整っていて、営業という面ではすごくいいと思う。
林 AIの活用は営業の現場の課題だ。ライフプランニングも、今では年齢や年収、子どもの有無などを入れるだけで自動的に作成してくれるものもある。身近に感じていない販売人もいるかもしれないが、これからますます活用が期待される。
――MDRT日本会の歴史について。
小嶋 私が最初に総会に参加したのは阪神淡路大震災の翌々年で、いまほどの出席者はいなかったと記憶している。女性が多く、男性は少なかった。MDRT日本会は当時すでにボランティアに積極的に取り組んでいた。
そこから30年が経ち、日本会も少しずつ変化してきた。それは運営に携わってこられた先輩方のおかげだ。22年に日本会の会長を経験した際は、社会情勢を鑑みながら、MDRTとしてなにを大事にしていくべきだということを考えて運営を行った。
尾崎 私がMDRTに初登録した03年当時は、生命保険各社でMDRTの活動への理解度にバラつきがあると感じていた。自社の社員が研修会に参加することに消極的だった会社もあったと思う。そこから20年余り経ち、会員たちの努力による日本会の発展や、積極的な情報発信とそれに伴う日本会の活動への理解向上などにより、研修会への参加者は年々増加している。MDRTに登録した人が良いものだと判断して参加するからこそ、MDRT日本会は廃れずに人数が増えていっているのだと思う。以前は消極的だった会社も、社員が参加することのメリットを理解している。
――MDRT日本会の役割について。
林 MDRT日本会には業界のリーダーとしての役割がある。MDRTというのは信頼の証であり、会員は「顧客第一主義」「社会貢献」などの基本理念と倫理綱領に沿って行動する必要がある。大多数が会社員である募集人には「会社の利益追求」という責任もあるが、MDRTは利益を追求するための組織ではないので、私たち会員には生命保険募集人としての倫理の順守や、理想を追求することが求められる。
千葉 20年度に会長を経験した際には、その点が曖昧な会員の存在が気になった。そのため、「MDRTとしてあるべき真の姿を」をスローガンに掲げて、お客さまと接していく中で何を大事にすべきかということをあらためて全体で意識した。
尾崎 MDRTになるには成績基準があるので営業成績に対する意欲が強い人も入会してくるが、MDRT日本会は明確な理念を掲げて活動しているので、研修や総会に参加すれば、数字だけを目標にすることよりもお客さまに対しての気持ちや在り方を大切にすることの方が素敵だと気付くことができる。若い人や新しく生命保険募集人になった人たちが研修に参加することの一番のメリットはここにあり、それらの経験を経て高い倫理観を持つ生命保険募集人に成長していくことができる。もしMDRT日本会がなければ、一般消費者から見る業界のイメージはもっと悪いものだったろうと思う。MDRTのそうした役割は、これからも変わらない。
林 研修への参加によって仲間ができることも、MDRTの良いところだ。同じ志を持った仲間ができることの素晴らしさは、参加してみないと分からない。
千葉 運営側からは研修参加への呼びかけや情報提供は積極的に行っているが、実際の参加へつなげることは難しく、課題だ。
――今後の抱負を。
小嶋 生命保険募集人としての志は昔から変わっていないが、高齢化が進み相続の場面に立ち会う機会も増えることが予想されるので、そこに向けては保険の提供のみならず、あらゆる面からよりトータルでサポートしていきたいと考えている。また後輩の育成も課題で、成績が厳しくとも前向きに取り組んでいる人たちをサポートしていきたいと思っている。
米国でMDRTが発足して、27年には100年を迎える。MDRT日本会も発足より55年が経ち、歴史が積み重なってきた。MDRT日本会の会長経験者としては、もっと多くの人にこの組織のことを正しく知ってもらって、目指す人が増えてほしいと思う。
千葉 06年度に初回登録をして初めて参加した総会では、それまで効果的な募集の「やり方」を探ることに必死だったが、初めて募集人としての「在り方」を問われて衝撃を受けた。そこから23年が経ち、良いことも悪いことも含めてたくさんの経験を重ねて成長してきた。今後はそういった経験を後進に伝え、若い人のサポートもしたい。個人としては、いま抱えている自分のお客さまを、引退後どのようにケアして守っていくかということが課題だ。MDRTの運営についてはすごく苦労したので、その経験を生かして日本会に恩返ししていければと思う。
林 現会長として、会員にはこの生命保険募集人というすばらしい仕事にもっと誇りをもってやってほしい。いまはネットでも保険に入れる時代で、AIの普及もあって私たちの存在がとって代わられるのではないかと言われるが、伴走者としてお客さまの人生に寄り添うことができるのは私たちだけである。そこはAIにとって代われることはない。だからこそ、会員にはこの仕事を誇りに思ってほしいし、小さい子に将来何になりたいか尋ねた時に、「生命保険募集人になりたい」と言われるような仕事にしていきたい。募集人の社会的地位の向上を目指している。
尾崎 MDRT日本会の活動で会員が心を磨くと、その会員が所属している会社の人たちにも必ず良い影響を及ぼす。このように、MDRT日本会には業界の「羅針盤」のような役割があり、日本会が正しく運営されて機能することは、保険業界全体の適正化につながるはずだ。MDRT日本会の副会長として日本会の健全な運営に尽力し、新しく入ってくる人もずっと支えてくださっている先輩たちも、この仕事をやっていてよかったと思える業界にしていきたい。
