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【保険毎日新聞社 創刊80周年記念特集】少額短期保険3社座談会 「保険」の裾野を広げていく 多様なニーズに応えることが使命

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【保険毎日新聞社 創刊80周年記念特集】少額短期保険3社座談会 「保険」の裾野を広げていく 多様なニーズに応えることが使命

少額短期保険は2006年に誕生し、来年制度創設から20周年を迎える。時代の変化とともに革新的な商品を次々と生み出し、業界は右肩上がりの成長を続けてきた。そこで少額短期保険の今後を考えることを目的に、少額短期保険会社3社による座談会を行った。業界における歴史や会社としての成り立ちの異なる3社に、開発の苦労や他社商品への思い、今後少額短期保険業者に求められるもの、それぞれの展望など、さまざまな切り口から話を聞いた。

(前列左から)安藤氏、清水氏、八星氏   (後列左から)長谷川氏、高橋氏、小川氏



座談会参加者



MSプラスワン少額短期保険:
代表取締役社長 八星 衛 氏
商品開発部長 小川 慶祐 氏

Mysurance:
代表取締役社長 清水 廣臣 氏
取締役執行役員兼コーポレートマネジメント部長 高橋 明生 氏

アイアル少額短期保険:
代表取締役社長 安藤 克行 氏
デジタル保険部長 長谷川 慧 氏





保険のイメージをポジティブなものに



会社紹介



八星 MSプラスワン少額短期保険は三井住友海上の完全子会社で、2024年に設立し12月に初めての保険商品を発売した。歴史としてはまだ約1年で、参加メンバーの中では一番の新参者。今日はいろいろと勉強させてもらいたいと思っている。



清水 Mysuranceは18年に設立し、19年から営業を開始した。SOMPOホールディングスを親会社とするSOMPOグループの一員であり、デジタルインシュアテック企業として、世の中の新しい市場・ニーズに対応しながら商品の提供を行って6年目になる。初期はコロナの影響もあり苦戦を強いられていたが徐々に会社の経営も安定し、現在は大きく五つの商品を販売している。



安藤 アイアル少額短期保険は、私が06年に立ち上げたライズ少額短期保険会社と、学総という別の少額短期保険会社が11年に合併して誕生した会社だ。19年には住友生命グループの傘下に入った。もともと作っていた家財保険や医療保険などの商品と、インターネットで募集を行うデジタルの保険分野、その両輪の販売で経営を行っている。



商品開発で苦慮する点



安藤 少短制度の導入時、届け出たほとんどの会社は無認可共済からの移行組だったが、私は代理店という販売業から参入した。「オリジナルTシャツを作るのと同じぐらい、簡単に保険を作る」を標榜して営業したため多種多様なオーダーを経験し、企画の前段階の、相談を受けるところでも難しさがあることを学んだ。企画においては、保険料が高すぎると売れないし安すぎると損害率が高騰してしまうので、補償内容と保険料のバランスに注意している。

長谷川 デジタルの商品に関しては、瞬発的に入ってもらわないとお客さまが離脱してしまう。22年4月にPayPayで発売し、3カ月で5万件の契約を獲得した「熱中症お見舞い金保険」では、商品性を分かりやすい文言で伝えることを意識した。

高橋 われわれもデジタル保険会社を標榜しているので、常に新しいものを作りたいと思っている。契約者が相互にリスクを分担し合うP2P保険「愛車プロテクト」の開発では、テクニカルな保険技術の使用や法的な問題のクリアなど乗り越えなければならないことが多かった。一方で、お客さまに届ける際には分かりやすさが大切で、そのギャップを埋めるための言語化や見せ方の工夫に苦慮した。

清水 保険商品の販売や保険金の支払いといった、従来ネガティブなイメージを抱かせるようなものを、どのようにしてポジティブに変換できるのかということはいつも考えている。今年度発売を開始した「推し活キャンセル保険」は、保障内容自体は従前のキャンセル保険と大きくは変わらないが、金融に詳しくない若年層にどうやって届けるのか、そのコミュニケーションプランを徹底的に研究した商品だ。保険金を受け取れば次のイベントの軍資金となることなど、このキャンセル保険がいかに推し活に有用なものかを、必要な層に分かりやすく届けるよう工夫した。

八星 12月に発売し、3月に第11回少額短期保険大賞を受賞した「返品送料保険」の商品開発においても、保険を使うことのネガティブなイメージをポジティブに変えることが出発点だった。企画段階で出てきた「試着感覚で」の言葉をキーワードに、試着をするくらいの手軽さでショッピングとともに保険を利用してもらい、それによりEC取引自体を活性化できないかと考えて開発に取り組んだ。また、一般的には手間のかかる面倒なものという認識の保険金支払いについても、シンプルで迅速に行えないか試行錯誤した。返送の際の送り状を写真で撮ってアップロードしてもらい、AI―OCRで読み取ったうえで迅速な支払いを可能にするという仕組みを検討し、技術を持つ事業者と対話しながら実現に漕ぎつけた。開発は困難な道のりだったが、お客さまからの高い評価につながっていると思う。



アイデア出しについて



小川 今日参加の他の2社は、とてもエポックメイキングな商品を作られている。商品のアイデアに関して、日頃からどのように考えていらっしゃるのか、可能な範囲で伺いたい。

高橋 答えになっているか不安だが、当社では「商品開発担当」が決まっておらず、全員が考える体制をとっている。フロントのメンバーがアライアンス先と話せばそこを起点にアイデアが生まれることもあるし、法改正に対応するバックオフィスの人間から話がでてくることもある。オフィスでは3~5人ぐらいの人が集まって、「こんなアイデアが降ってきたんだけど、技術的にいけるかな…」と話し合ったりしていて、いろいろな場所で突然に新商品開発会議が始まる。そういう話しやすいムードがあると思う。

長谷川 当社のデジタル保険は媒体がPayPayなので、PayPayほけんからの要望を受けて、それをヒントに考えることが多い。また住友生命からも「こういうのできないか」といったリクエストをもらい、それをヒントにアイデアを出し合うこともある。

安藤 個人的に、商品を作ること・考えることは昔から好きだ。外資系の損保に4年在籍したが、そこでの経験も大きい。アイデア出しの会議では、出てきたアイデアを全て否定しないことが決められ、最後まで残ったワードで商品を検討した。当時日本社には、会社としての保険種類ごとの規定集やハンドブックがあったが、外資系の損保にはそういったものがなく、代わりに事業方法書を見ながら商品を考えるという経験もした。事業方法書にはハンドブックにないことが大量に書いてあり、「こんなにいろんなことができるのか」と、保険を作ることが面白くなっていった。家でテレビを見ていても、なにかリスクを認識すると、それに対していろんな角度からアプローチを考えたりして、いつもアイデアの種を探している。

小川 大変参考になったので、今後の商品づくりに生かしていきたい。この業務を担当してから、社会課題やニュースリリースなど、入ってくる情報に対して保険として何かできることがないかというのは考えるようになった。しかし、「アイデア」から一歩踏み込んで、リスクと補償内容のバランス、つまり「商品」としての保険組成を検討すると、途端に難しさを感じており、リスクと補償内容のバランスには頭を悩ませている。今日話を聞いて、少額短期保険に関わる全員がそれぞれにモノづくりのプレッシャーや、保険組成の難しさを感じていることが分かり、励まされた。



他社の商品で良いと思ったものは



小川 Mysuranceの「愛車プロテクト」やソニー少額短期保険の「わりかんがん保険」のような、保険料決定の仕組みをお客さまにオープンにする保険は新しいと感じた。これまでブラックボックスになっていた保険料を透明化することで、お客さまにとってわかりやすい商品になっており、良いと思う。

高橋 個人的にすごいなと思ったのは、弁護士費用保険のなかでも、事案が発生した後に入れる保険。なかなかのエポックメイキングだと感じている。やはりお客さまが保険に一番入りたい時は実際のリスクに直面した時に違いなく、お客さまの本当のペインポイントをカバーできるものだと思う。



長谷川 当社はPayPayで熱中症保険を販売しているが、熱中症保険は母数を集めることが重要で、そうしなければ成立しないような種類の保険だ。多くの人に加入してもらうには入りやすい環境に適切に情報を出していくことが必要だが、その意味ではサマーソニックとの協業で販売した第一スマート少額短期保険の「デジホの熱中症保険(正式名称:熱中症保険)」は、売り方としてすごくうまいと感心した。

安藤 さっき「保険を明るい商材にしたい」という話が出たが、それは私も少額短期保険に関わる中でずっと思ってきたことだ。保険は支払いの際には喜んでもらえるが、販売の場面ではお客さまとの間に障壁ができやすいものでもある。販売の場面でも分かりやすく前向きな、明るい商材にしたいという観点からみると、ジャパン少額短期保険の「痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士費用保険」の消費者に対するネーミングの分かりやすさや、Mysuranceの「推し活キャンセル保険」のようなマーケット特性に合わせた商品作りは見習いたいと思う。



社会の状況に合わせた柔軟な商品提供を



今後少額短期保険業者に求められるものは



安藤 お客さまをセグメントして絞り込むことによって、これまで顕在化してこなかったニーズやリスクに気付くことができる。われわれ少額短期保険業者はそこにダイレクトにアジャストできるような保険商品を、シンプルに分かりやすく届けていくことが使命だ。そこでお客さまに「保険」を理解してもらえれば、生命保険、損害保険という次のステップに進んでいける。そうして「保険」というもの自体の裾野を広げて、グループや会社の垣根を越えて、生命保険・損害保険それぞれの業界にお客さまをつなげていけるような、架け橋のような役割を担うことができるのではないかと考えている。

清水 損保業界での経験も長いが、少額短期保険業者には社会の変化に柔軟かつタイムリーに合わせた商品提供ができるという強みがある。その少額短期保険ならではの機動性を生かして、多様な購買行動にあわせた商品を作っていくことが、われわれに課せられたミッションの一つだ。

八星 重複するが、いかに多様なニーズに応えていくかということ。これまでは見過ごされてきた、あるいは大きな枠の中に入っていたニーズを細かくセグメントしていくと、実はこの大きな枠に向けた商品では満足できていないという層にリーチするような商品作りができると思う。隣接業界との線引きなど課題はたくさんあるが、挑戦していきたいと思っている。



今後の展望を



長谷川 さきほども触れたが、第一スマート少短の「熱中症保険」のように、商品やサービスの購入に付随して加入できるエンベデッド保険は、お客さまにとって入りやすいものであるだけでなく、われわれとしても多くの母数がとれることや、保険自体の健全性担保の面からも魅力的に感じている。そういったものはこれから積極的に取り組んでいきたい。また個人的には、損害と因果関係のある指標が契約時に設定した条件を満たした場合に支払いを行うパラメトリック保険にも挑戦していきたいと思っている。




安藤 商品の組成でもいろいろチャレンジしていきたいが、販路の開拓も積極的に行っていきたい。PayPayとの協働ではその重要性を身に染みて学んだ。また、第三者支払い特約やフリーインシュランスといった仕組みが出てきていることもあり、保険の新しい活用方法を企業と協業して開発し、補償内容と販売方法を掛け合わせた新しいものを作っていきたい。



高橋 青臭いかもしれないが、やはりお客さまになるべくよいものを届けたいという思いが一番にある。そう考えると、保険金の支払いという金銭面のカバーがお客さまの一番望むことなのか、という問いも生まれる。お客さまが保険商品を購入する際に本当に望むものが、保険金ではないということも往々にしてある。それがサービスなのか事故対応なのか、そういったところに一度立ち返り、お客さまのペインポイントを解消するためになにができるか。補償とサービスをうまく融合させて、お客さまの本当の困りごとを解決できる商品を作りたいと考えている。



清水 われわれはインシュアテックカンパニーを標榜しており、お客さまに新しい体験を提供するというミッションを掲げている。今後ますますオンラインでのCX体験が増えると予想しており、そういった社会の状況に合わせて柔軟に商品を考えていきたい。少額短期の業界特性とインターネットを通じた購買行動をうまく掛け合わせて、新しい市場に有意な商品提供をしていけるような準備をしていきたいと考えている。

小川 過去から学ぶだけではなく、気候変動や少子化など、一社会の中長期的変化から、将来の予測を取り込んだ商品を作っていくことができれば、よりお客さまに価値を感じて頂けるものを提供することができると考えている。

八星 そういった社会課題の解決に「デジタル・身近・少額」という、少額短期保険の特性を生かした商品づくりをしていければと考えている。なかなか難しいことだと思うが、諦めずにやっていきたい。



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