金融庁 「保険会社向けの総合的な監督指針」改正案を公表 「有識者会議」「金融審WG」踏まえ早急な改正期す 「過度な便宜供与の防止」「不適切な出向の防止」など7項目
5月12日、金融庁が「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)を公表した。改正の内容は、▽損害保険会社による保険代理店に対する指導等の実効性の確保▽保険代理店等に対する過度な便宜供与の防止▽保険代理店等に対する不適切な出向の防止▽代理店手数料の算出方法適正化▽顧客等に関する情報管理態勢の整備▽政策保有株式の縮減▽仲立人の媒介手数料の受領方法の見直し―の7項目で、A4判新旧対照表で17ページのボリューム。パブリックコメントの締め切りは6月13日(金曜日)午後5時00分(必着)となっている。
3月に国会に提出された「保険業法の一部を改正する法律案」に関しては、金融庁では政令、府令の改正も予定されているとしていたが、それらに先立って監督指針案が公表された。金融庁では、「損害保険業における保険金不正請求事案及び保険料調整行為事案を受け、顧客本位の業務運営の徹底及び健全な競争環境の実現といった観点から、制度・監督上における必要な対応を検討するため、2024年3月から6月にかけて、「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を開催して幅広く議論を行った。同会議の報告書においては、法律改正が必要と考えられる論点については、金融審議会の開催も視野に、金融庁を中心に必要な対応が行われることへの期待が示された。これを受けて、金融審議会に「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」が設置され、同年9月から12月にかけて幅広く議論が行われ、同年12月25日にワーキング・グループの報告書が公表された。一方で、保険業界を巡っては、保険会社や保険代理店における情報漏えい事案も相次いで発覚しており、本年3月には損害保険会社4社に対して業務改善命令を発出したところ。金融庁としては、有識者会議及びワーキング・グループの報告書において、「保険会社向けの総合的な監督指針」の早急な改正に対する期待が示されたことを踏まえるとともに、足元で発覚している情報漏えい事案への迅速な対応を図るため」、監督指針の所要の改正を行うこととしたとしている。
監督指針改正案の内容は以下のとおり。
■損害保険会社による保険代理店に対する指導等の実効性の確保
「Ⅱ―4業務の適切性Ⅱ―4―2保険募集管理態勢Ⅱ―4―2―1適正な保険募集管理態勢の確立」の「(4)特定保険募集人等の教育・管理・指導」に「また、保険会社においては、営業面への影響の大きさにかかわらず、保険代理店における体制整備や保険募集等の適切性について、日常的な教育・管理・指導に加え、代理店監査等を通じて検証し、課題等が認められた場合には期限を定めて改善を求めるなど、保険代理店に対する指導等が適切に行われるよう、その実効性を十分に確保しているか」を新たに付け加えた。さらに、「(5)監督手法・対応」として、「保険会社による特定保険募集人に対する指導等の状況については、保険会社に対する深度あるヒアリング等のオフサイトモニタリングを行うことや、必要に応じて法第128条に基づく報告を求めること、法第129条に基づく立入検査の実施を通じて把握することとする。その上で、重大な問題があると認められる場合には、法第132条に基づき行政処分を行うものとする」を新設した。
■保険代理店等に対する過度な便宜供与の防止
「Ⅱ―4―2―9保険募集人の体制整備義務(法第294条の3関係)」に、「(6)二以上の所属保険会社等を有する保険募集人が、保険会社等に対して過度の便宜供与を求めることは、当該保険募集人において、便宜供与の実績に応じて特定の保険商品を推奨する事態を誘発し、顧客の適切な商品選択の機会を阻害するおそれがあるため、防止される必要がある。そこで、二以上の所属保険会社等を有する保険募集人は、比較推奨販売を行う場合には、顧客の適切な商品選択の機会を確保する観点から、Ⅱ―4―2―12を踏まえ、保険会社等に対し過度の便宜供与を求めること及び保険会社等から過度の便宜供与を受け入れることを防止するため、自己の規模や特性に応じて、以下の措置を講じているか。(以下、注、ア~オは略)」を新設した。
同じく新設の「Ⅱ―4―2―12保険代理店等に対する便宜供与」では、「(1)過度の便宜供与の防止」で「保険会社が、保険代理店等に対して便宜供与を行い、その見返りとして保険募集人が当該保険会社の保険商品を優先的に推奨することによって、顧客の適切な商品選択の機会が阻害されるおそれがある。このため、保険会社は、以下のとおり、保険代理店等に対する過度の便宜供与を防止する必要がある」とし、①態勢整備②過度の便宜供与に係る判断基準―を詳細に規定、「(2)法128条に基づく報告徴求」で、「監督当局は、保険会社に対し、上記(1)に係る取組状況について、必要に応じて法第128条に基づき報告を求める」とした。
■保険代理店等に対する不適切な出向の防止
「Ⅱ―4―2―13保険代理店に対する出向」を新設し、「(1)不適切な出向の防止」で、「保険会社が、保険代理店に対して自社の役職員を出向させ、保険募集に関する業務等に従事させることは、当該出向が過度の便宜供与として機能するなどにより、出向元の保険商品の優先的な取扱いを誘引し、もって顧客の適切な商品選択の機会を阻害するおそれがある。また、保険代理店の顧客情報等(Ⅱ―4―2―13において、保険代理店が保険募集以外の事業を兼業している場合には、当該事業に係る顧客情報等を含む。)に接する機会のある出向者については、顧客情報等の不適切な共有を行う可能性があり、出向元保険会社の役職員が当該情報の共有を受けることを含め、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)、不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)等の法令に抵触するおそれや、法令に照らして不適切な行為となるおそれがある。これらの問題点は、競合他社の顧客情報に接する機会のある乗合代理店への出向においては特に留意する必要がある。さらに、特定の保険代理店に対する出向者数、出向期間や出向先において従事する業務の内容等によっては、保険代理店としての自立を阻害するおそれや、保険会社における利益相反管理の観点から不適切なものとなるおそれがある。このように、保険代理店への出向には、過度の便宜供与と同様に顧客の適切な商品選択を阻害するおそれだけでなく、特有の弊害を生じさせるおそれが存在することを踏まえ、保険会社は以下のとおり、保険代理店に対する不適切な出向を防止する必要がある」とした。以下、「(2)態勢整備」「(3)出向の適切性に係る留意事項」が詳細に規定されている。
■代理店手数料の算出方法適正化
「Ⅱ―4―2―14代理店手数料の算出方法」を新設、「個々の代理店手数料の算出方法については、代理店委託契約に基づき、損害保険会社と保険代理店との間の協議・合意により決定されている。この算出方法について、保険代理店に保険募集に関する業務の健全かつ適正な運営を阻害する不適切なインセンティブを与え、不適切な保険募集を誘引することがないよう、以下の点に留意するとともに、これらの潜脱が防止されているか。なお、代理店への手数料の算出に当たっては、保険募集に関する業務の健全かつ適正な運営を確保する観点から、コンプライアンス上疑義のある事案の発生状況等を考慮しているか」とし、留意点として「(1)損害保険会社による評価項目としては、「規模・増収率」に偏ることなく、「業務品質」を重視しているか。(2)業務品質評価の具体的な指標について、損害保険会社の事務効率化にとどまらず、顧客にとってのサービス向上や法令等遵守に資するものとなっているか。(3)乗合代理店におけるシェアの拡大・維持や、保険代理店の新設や乗合いの承諾を得るなどの営業上の目的で、他の損害保険会社の代理店手数料の割増引率に追随するなどの例外的な運用を行っていないか。(4)業務品質評価割合の考え方を開示しているか。」が規定された。
■顧客等に関する情報管理態勢の整備
「Ⅱ―4―5顧客等に関する情報管理態勢Ⅱ―4―5―2主な着眼点(1)顧客等に関する情報管理態勢」の①を「①経営陣は、顧客等に関する情報へのアクセス及びその利用は業務遂行上の必要性のある役職員に限定されるべきという原則(以下「 Need to Know 原則」という。)を踏まえ、顧客等に関する情報管理の適切性を確保する必要性及び重要性を認識し、業務の内容・規模等に応じて、そのための組織体制の確立(部門間における適切な牽制の確保を含む。)、社内規程の策定、金融グループ内の他の金融機関(持株会社を含む。)との連携等、内部管理態勢の整備を図っているか」と改正し、②③でも所用の改正を行った。
■政策保有株式の縮減
(紙面の都合により省略)
■仲立人の媒介手数料の受領方法の見直し
「Ⅴ保険仲立人関係Ⅴ―4他の募集人等との関係Ⅴ―4―4顧客との関係」の「(1)保険契約の締結の媒介に係る手数料等」を「(1)再保険契約以外の保険契約の締結の媒介に係る手数料等の請求方法」と改正した。そこで新設の「①企業分野の保険契約の締結の媒介に係る手数料等の請求」では、「保険仲立人は、企業分野の保険契約の締結の媒介に関する手数料等について、顧客や引受保険会社等に請求できるが、請求を行うにあたっては、以下のいずれの事項も遵守しているか。なお、保険仲立人が、顧客に対して手数料等を請求する場合にあたっては、例えば、保険契約の媒介に係るコストを大幅に下回る手数料等を設定するなど、不当な競争を招くおそれが生じないよう、留意する必要がある。」としたうえで、「ア.保険会社等にのみ手数料等を請求する場合 (ア)保険仲立人は、顧客の求めに応じて、顧客に対して、当該保険契約の引受保険会社等から受領する手数料等の金額又は保険料に占める割合を開示しているか。(イ)保険仲立人は、顧客に対して、当該保険仲立人と保険会社等又は保険持株会社との間で人的・資本的関係又は利害関係がある場合には、その旨をあらかじめ開示しているか。」「イ.顧客及び保険会社等の双方に手数料等を請求する場合 保険仲立人は、ア.(ア)及び(イ)に加えて、顧客が保険会社に対して支払う保険料を適切な水準にする観点から、以下の事項を遵守しているか。(ア)媒介業務に係る契約の締結前に、顧客に対し、顧客及び保険会社等の双方に手数料等を請求することを説明しているか。(イ)保険会社において保険料を決定する前に、保険会社等に対しても、適切な方法により顧客から受領する手数料等の金額を開示しているか。」としている。
同じく新設の「②企業分野以外の保険契約の締結の媒介に係る手数料等の請求」では、「個人顧客との間には情報の非対称性等から生じる交渉力の優位性が総じて残りやすいことを踏まえ、当面の間、上記①の手数料等の請求方法については、企業分野の保険契約のみを対象とし、これ以外の保険契約については、保険仲立人は、手数料等を、保険会社等に請求するものとする。」としている。
なお、金融庁では、今回の改正の他にも、有識者会議の報告書で提言された内容や、ワーキング・グループの報告書の内容等を踏まえた監督指針のさらなる改正を、引き続き検討していく予定としている。
大樹生命では4月1日付で、代表取締役副社長執行役員だった原口達哉氏が代表取締役社長社長執行役員に就任した。日本生命および社外も含めてさまざまな部門を経験し、大樹生命には昨年度着任している。同社は本年度が中期経営計画の2年目であり、2027年3月には100周年を迎える。「初年度の課題は『リテール営業』であり、営業職員組織の強化に注力する。国内マーケットでのプレゼンスを確立していきたい」と話す同氏に、着任の感想や具体的な方針、将来展望などについて聞いた。
――就任のご感想を。
原口 第一に感じるのは責任の重さだ。私は、2年前まで日本生命でさまざまな部門に携わってきた。入社以来、人事、資産運用、リテール部門、支社長、大企業向けホールセール、事務システム、営業企画、主計部などの業務を網羅的に経験した。社外でも、郵政民営化時には日本郵政に出向し、ニッセイ情報テクノロジーでも仕事をした。生保に関わる仕事を幅広く経験し、日本生命以外での仕事の経験も多くあるため、業務に関する戸惑いはあまりない。社長は、いろいろな仕事を統合し、意思決定していかなければならないため、正しい情報を集めて取り組んでいく。外部環境の影響も大きく、金融マーケットも荒れており、その中で結論を出していくということは責任が重い。スピード感が大事だと思っている。
――
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