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生保協会スチュワードシップ活動 協働エンゲージメント実施へ 3テーマで投資先139社と対話 「総合的な開示」は一定の成果得て収束

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 生命保険協会は12月4日、東京都千代田区の同協会会議室で、「スチュワードシップ活動ワーキング・グループの参加会社による協働エンゲージメント実施」についての記者説明会を開催した。同協会では2017年から、同ワーキング・グループを通じて、複数の会員会社が機関投資家として連携し持続的な企業価値向上を目指して投資先企業と対話を行う協働エンゲージメントを実施している。9年目となる今年度は、昨年度に続き①資本コストや株価を意識した経営に向けた対応の開示②株主還元の充実③気候変動の情報開示充実―の3テーマで上場企業延べ139社を対象に実施する。

 協働エンゲージメントは、複数の投資家が連携して取り組むことで、企業に対する影響力を高められるほか、投資家間で専門知識やスキルを共有できる、対話に伴う業務負荷を分散できるなどのメリットがある。
 今年度は、昨年度に設定した3テーマを継続して実施する。一方、昨年度までテーマに掲げていた「総合的な開示」については、これまでの取り組みにより一定の成果が得られたことに加え、今後、有価証券報告書においてSSBJ基準に準拠したサステナビリティ関連情報の開示が段階的に義務化されることを踏まえ、収束することとした。
 対象企業に対しては、同ワーキング・グループに参加する生保10社(朝日生命、かんぽ生命、住友生命、第一生命、大樹生命、大同生命、太陽生命、日本生命、富国生命、明治安田生命(50音順))の連名で課題意識を伝える書簡を送付するとともに、対話を通じて具体的な説明を行うことで、協働エンゲージメントの実効性向上を図る。
 今回の説明会では、生保協会スチュワードシップ活動ワーキング・グループ座長の森敦也氏(第一生命責任投資推進部スチュワードシップ推進室長兼シニア・エンゲージメント・オフィサー)が取り組みについて解説した。
 「資本コストや株価を意識した経営に向けた対応の開示」については、東証プライム上場企業のうちPBRが1倍未満、東証スタンダード上場企業のうちPBRが1倍未満かつ時価総額が1000億円以上の企業で、東京証券取引所が要請する資本コストや株価を意識した経営に向けた対応の開示が確認できない企業23社に対し、自社の資本コスト・資本収益性の現状分析・評価に向けた計画の策定・開示を要望する。
 この取り組みは昨年度から実施しており、昨年度は時価総額1000億円以上かつPBR1倍未満の東証プライム・スタンダード上場企業のうち、東証の要請への対応が確認できない企業に対し開示を要望。書簡送付先のうち、プライム上場企業は全社が開示を実施したものの、スタンダード上場企業においては依然として未開示の企業があり、今年度は対象企業の抽出条件を見直した上で引き続きフォローを行う。
 17年度から実施している「株主還元の充実」では、長期間配当性向が30%未満かつ自己資本比率が高く投資実績に乏しい企業41社に対し、株主還元の向上(配当性向30%)を要望する。昨年度は3割弱の企業が配当性向30%の基準を達成し、また、送付先企業の約7割も基準未達ながら増配を実施。結果として9割超の企業で改善が見られた。
 「気候変動の情報開示充実」に関しては、スコープ1・2の温室効果ガス排出量上位約50社に対し、①気候変動に伴う経営上のリスクと機会の定量・定性分析と開示②2050ネットゼロに向けた温室効果ガス排出量削減のロードマップの策定・開示―の2点を要望し、脱炭素に向けた一層の取り組みと情報開示を後押しする。
 なお、①は19年度から実施しており、昨年度は送付先企業の定性分析が全社、定量分析が約9割で開示済みとなった。②は21年度から開始し、前年度は9割超が開示済みだが、今後も継続して定期的な分析の見直しや高度化、情報開示の充実を促す。
 さらに、温室効果ガス排出量上位約20社には、スコープ3の排出量削減に向けた取り組み内容の開示と高度化を要望する。この取り組みは23年度から実施しており、前年度は約8割の企業が開示済みで、23年度の約6割から改善が見られた。こちらも同様に、対応済みの企業に対しても開示の充実を働きかける。
 森氏は、「今後も企業との建設的な対話を通じて持続的成長に向けた取り組みを促し、中長期的な企業価値の向上、ひいては株式市場の活性化と持続可能な社会の実現に貢献すべく活動を続けていく。特に、市場で注目される『資本コストや株価を意識した経営に向けた対応の開示』については、企業に寄り添う姿勢を維持しながら積極的に対話に臨み、対応を後押ししていきたい」と述べた。

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