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保険毎日新聞社【創刊80周年記念特集】 次の時代へつなぐ「創新継承」 技術と人が導く保険業界の未来像 激動の80年と保険の新潮流

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 2025年12月、本紙は1945年の創刊から80周年を迎えた。この節目にあたり、「過去の知恵や技術を土台にしながら、新しい価値を創造し、それを未来へとつなげる考え方」という意味を持つ「創新継承」をテーマに、保険業界の過去・現在・未来を多角的に捉えた特集号を企画した。本特集では、業界の第一線で活躍する方たちへのインタビュー、対談、未来を見据えた提言などを掲載する。次の時代への道筋を切り拓くための一助となる視座を提示したい。

 戦後80年の保険業界
 保険業界の戦後80年は、規制と制度改革を通じて大きな転換を重ねてきた。その歴史を振り返ると損保業界では、1947年の独占禁止法公布により戦前の料率協定制度が廃止され、48年には米国の「料率算出団体法」をモデルとした「損害保険料率算出団体に関する法律(料団法)」が制定され、損保料率の算定会制度が法定化された。さらに同年、生損保業界で横行する不正募集に対応するため「保険募集の取締に関する法律(募取法)」が異例のスピードで制定され、募集人登録や禁止行為の規定が整備された。加えて民間生保市場に「月掛保険」が開放され、契約増加に伴い女性外務員が誕生している。51年には募集・集金・サービス活動を一体化した「デビット・システム」が導入され、生保業界の飛躍的成長を支えた。近年の不祥事を受けた改正保険業法成立と監督指針改正も、こうした歴史的制度改革の延長線上にあり、業界の健全性確保と顧客保護を目的とした新たな転換点となっている。
 また、戦後日本の保険業界は、1990年代に日米経済摩擦を背景に規制緩和と自由化の波に直面する。96年の保険業法改正で生損保の相互参入や商品届出制、保険ブローカー(保険仲立人)制度などが導入され、2001年までに第三分野参入や損保料率自由化が実現した。その後、金融ビッグバンの流れと重なり、銀行窓販や投信販売なども制度化され「激動の時代」が到来することになる。同時にソルベンシー・マージン比率報告や保険契約者保護基金の創設で契約者保護を強化。さらに06年には販売勧誘の苦情増加を受け、金融庁が総合監督指針を改正して重要事項説明書や意向確認書を導入、比較販売の禁止事項も明確化された。
 少短の誕生
 2006年の少額短期保険制度創設により、従来の生損保とは異なる新しい事業領域が生まれた。少短業界では、各社が時代の変化に応じた革新的な商品を次々と開発した。近年では「熱中症保険」や「推し活キャンセル保険」「返品送料保険」など、生活に密着した身近なリスクを保障する商品に消費者からの注目も高まっている。今後は顧客ニーズを細分化した社会課題に対応する商品づくりが求められており、エンベデッド保険やパラメトリック保険など新たな仕組みへの挑戦も視野に入れ、保険の裾野を広げ、多様なニーズに応えることにさらなる期待が寄せられている。
 DXの進展
 AIやデジタルを活用したDXの進展も、業界変化を象徴する動きだ。各社はAIによる審査の迅速化やオンライン契約の拡充を進め、顧客体験の向上を図っている。特にスマートフォンを活用した手続きの簡素化が進み、従来の対面を軸とした業務モデルは大きな転換期を迎えている。
 また、デジタル化は効率化にとどまらず、業界外との協業・共創を促す要にもなっている。保険業界のDXと協業・共創の取り組みを進める有識者は、スマホやECの普及によって顧客接点が多様化する中で保険の価値を正しく伝えるにはデジタルと対面の融合が鍵だと強調する。
 また、保険の根幹となる「信用」を守りながらイノベーションに挑戦することや、代理店も協業・共創の中でテクノロジーを活用したガバナンス強化などに努めることが重要であり、AIとの共創が業界の新潮流を切り開くとの考えが示されている。
 新たなサービス
 インシュアテック領域をけん引する人たちの中には、日本の保険業界は今後5年間で、AIやクラウドの進展により商品開発の柔軟性が高まる一方、代理店との責任分界や新たなチャネル競争が激化するとの予想も。一方、テクノロジーの共進化によって効率化と透明性が進み、海外プレーヤーとの比較からも高齢化や災害リスクを起点とした新事業が生まれることも期待されている。さらに保障の自動最適化やフィー型報酬など新サービスモデルが求められ、構造改革を通じて保険は顧客に寄り添う存在へ進化するとの考えが示されている。 
 自動運転技術の進歩
 イノベーションの潮流の中で、自動運転技術も確実に進歩している。現在、自動運転レベル4の社会実装に向けた研究が進められており、政府は27年度までに全国100カ所以上でのレベル4の移動サービス実現を目指し、その普及を支援している。この社会実装が実現すれば、無人運行により地方バスの減便といった地域交通の問題を解決できる可能性がある。観光や物流、エンタメ分野への展開も視野に入れ、移動そのものを体験化する新サービスの創出を目指した取り組みも進められている。自動運転は地域課題の解決と新たな価値提供の両面から未来を切り開こうとしている。
 人が持つ力の価値
 「人的資本」という言葉を目にする機会が増えている。デジタル化が急速に進んでいるものの、保険業界の発展を支えてきたのは、紛れもなく「人が持つ力」だ。 
 MDRT日本会の歴代会長と副会長は、商品多様化の中で保障訴求の重要性を強調し、これまでは保険の販売や加入といった「入口」が重視されてきたが、高齢化が進む現在は、保険金支払いという「出口」の質が問われる時代へと変化していると述べている。また、保険募集人は顧客の人生に寄り添うことができる唯一の存在であり続けるために仕事に誇りを持つ大切さを訴えている。こうした誇りと信念を持つ人たちの活躍こそが、保険業界の成長を支える基盤となっている。
 また、ジェンダーギャップを解消し、「個」を尊重する取り組みの重要性も一段と高まっている。生損保でカルチャー変革をけん引する女性リーダーは、ジェンダーにとらわれず一人一人が力を発揮できる環境づくりの必要性を強調している。また、否定や圧力ではなく希望や情熱で人を動かすマネジメントを重視し、管理職の役割を「負担」ではなく「挑戦」と捉え、個性を力に変え組織の未来を切り開くという視点が重要だとし、多様性を尊重し、社員が自分らしく働ける環境こそが業界の持続的発展につながると語っている。
 自然災害の頻発・激甚化
 自然災害の頻発・激甚化を受け、業界全体で防災・減災に向けた取り組みが広がっているが、なかでも保険代理店は、地域と人を支える立場として重要な役割を担っている。令和6年能登半島地震で輪島市や珠洲市などの代理店事業所が倒壊し通信も途絶したが、廃業はなく仮設店舗や自宅を拠点に営業を継続。石川県代協の田端悟会長は「まず家族を守り、その上でお客さまを守る」との思いで顧客対応を行ったと振り返っている。同氏は平時のBCP見直しと地域を超えた支援ネットワーク構築という備えの重要性を伝え、保険代理店が「地域と顧客を守る最後の砦」であるという使命を胸に今日まで取り組みを続けている。
 業界紙として
 近年、保険業界はデジタル化の進展、人口構造の変化、災害リスクの増大など、かつてない課題に直面している。こうした状況下において、情報の質と深度がこれまで以上に求められている。当社は、これまで蓄積してきた知見とネットワークを生かし、読者の判断を支える価値ある報道を続けていきたい。80年の歴史は、多くの読者、関係者、そして業界の皆さまの支えによって築かれたものであり、ここに深く感謝を申し上げるとともに、次の100年に向け、より一層の研さんと挑戦を重ねていきたい。

Pick Up
対談―カルチャー変革の実践「“個”の実現を組織の力に」―「いきいき・わくわく」が未来を開く(2面)

 保険業界が激動の時代を迎えている今、新たな価値を生み出す多様性や個性の尊重が一層重要性を増している。業界が社会的意義を守りながら発展し続けるためには、“個”を大切にする組織文化への変革が不可欠だが、一方で男女差に目を向けると、保険業界の平均女性役員比率は約16%(2024年7月末時点)にとどまり、ジェンダーギャップ解消には依然として課題が残る。そこで本紙では、性別にとらわれない“個”の実現と組織力の強化を目指しカルチャー変革をけん引する二人のリーダーによる対談を企画した。損保ジャパン常務執行役員CHRO・CCuOの酒井香世子氏と、第一生命ホールディングス執行役員Group Chief Brand and Culture Officerの坂本香織氏に、変革の実践や一人一人が個性を発揮していきいきと働くために必要な視点について語ってもらった。

 ――これまでの経歴を。
 酒井 1992年に旧安田火災(現損保ジャパン)に入社し、営業店勤務を経験した後、国内金融機関初となる環境専門部署の地球環境室に配属された。環境報告書の作成やエコファンドの企画など、保険会社の枠を超えた業務に関われたことは大きなやりがいにつながった。その後、広報、人事、内部監査、内閣府男女共同参画局への出向など、幅広い業務を経験し、損保ジャパンDC証券の社長を経て、現在は損保

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Headline INDEX
1面
保険毎日新聞社創刊80周年記念特集 次の時代へつなぐ「創新継承」 技術と人が導く保険業界の未来像
2面
対談 損保ジャパン常務執行役員 酒井香世子氏 第一生命HD執行役員 坂本香織氏 カルチャー変革の実践「“個”の実現を組織の力に」
3面
対談 住友生命エグゼクティブ・フェロー/デジタル共創オフィサー岸和良氏×GuardTech検討コミュニティ代表温水淳一氏 保険業界の新潮流~協業・共創がもたらすイノベーション~
4面
対談 広がる自動運転の可能性 SOMPOインスティチュート・プラス/ピクセルインテリジェンス
5面
対談 リードインクス代表取締役社長兼CEO 柏岡潤氏 ボストンコンサルティンググループマネージング・ディレクター&シニア・パートナー 高部陽平氏 保険業界の新たなサービス考察
6面
保険業界・制度改革で振り返る「戦後80年」の歩み
7面
保険業界・制度改革で振り返る「戦後80年」の歩み
8面
MDRT 歴代会長・副会長に聞く 生命保険業界とMDRT日本会のこれから
9面
迫りくる巨大地震に向けて 石川県代協 田端会長インタビュー
10面
少額短期保険3社座談会 「保険」の裾野を広げていく
11面
少額短期保険3社座談会 「保険」の裾野を広げていく
12面
保険業界紙の存在意義~創刊80周年に寄せて~ 結心会 上野直昭会長/日本保険仲立人協会 平賀暁理事長