損保協会 請求関係書類をオンライン上で提出・閲覧 自賠責損調共同システム「s―JIBAI」運用開始 業務効率化、情報管理・BCP強化に寄与
損保協会は12月1日から、自賠責の損害調査業務で必要な請求関係書類を電磁的に提出・確認できる業界共通システム「s―JIBAI」の運用を開始した。これにより、保険会社や損保料率機構は、請求関係書類を共有データベース上で提出・閲覧できるようになり、業務の効率化や郵送に伴う遅延・紛失リスクの低減、情報管理の高度化が見込まれる。初期参加は損保8社と損保料率機構で、同協会ではさらなる導入拡大を目指している。
「s―JIBAI」の運用に関わる「損害調査業務効率化プロジェクト」の中核を担う、損保協会損害サービス企画部自動車グループの井元健氏によると、2021年に同プロジェクトが発足した当初から損保業界では「自賠責の損害調査業務は依然として紙中心」という課題が指摘されており、「紙中心の業務プロセスを電子化できないかという発想から検討を始めた」と説明する。
新システムでは大容量の共有データベースを構築し、事案ごとに専用フォルダを設置。関係する保険会社と損保料率機構がオンライン上で同一データを確認できる仕組みとした。井元氏は「これまで必要だった郵送やコピーなどの作業が不要になり、誰がいつどの事案を見たかも把握できるようになった」と述べ、業務のオンライン移行による効率化効果を強調する。
従来の請求手続きは自動車損害賠償保障法施行令で「書面による提出」が規定されており、被害者から保険会社に届く書類は紙しか許容されていなかった。そのため、その後の保険会社から損保料率機構への照会や、保険会社同士の調査書類のやり取りも紙原本を郵送する形が慣行として続き、電子化には法令改正が必要だった。そこで同協会では国土交通省に法令改正を申し入れ、12月1日付で書面による請求要件が見直された。これにより、自賠責損害調査における保険会社および損保料率機構の間でのやりとりの電子化が可能となり、同日から「s―JIBAI」の運用開始に至った。
システム導入の効果は多岐にわたる。電子化により、郵送待ちがなくなることで作業時間が短縮されるだけでなく、紙書類が手元になければ業務が止まってしまうという従来の慣行では回避できなかった弱点が解消される。その具体例の一つとして、井元氏は災害時の利用を挙げる。「紙による対応では大規模災害時に担当者が書類を持ち出せないと業務が止まってしまうことが懸念されるが、電子化により場所を問わずアクセスできるようになり、BCP(事業継続計画)の観点からも業務継続の実効性が高まる」と話す。
またコロナ禍以降の在宅勤務が進む中、「紙を提出するために出社せざるを得ない業務もオンラインで対応できるようになる」と説明する。その他、同氏は「書類の紛失など紙のままでは管理しきれない情報漏えいリスクが減り、閲覧履歴が残ることなどから情報管理の強化にもつながる」などのメリットも挙げる。
現時点では、あいおいニッセイ同和損保、AIG損保、共栄火災、損保ジャパン、大同火災、東京海上日動、日新火災、三井住友海上の合計8社(五十音順)が参加しており、これら8社で自賠責保険契約の約9割をカバーする。ただし、未参加企業が残る限り、それらの会社が関与する事案では紙の書類の郵送が必要となり、業務の完全なペーパーレス化には至らない。同じく損害サービス企画部自動車グループの長屋匡和氏は、「未参加の保険会社や共済団体にも参加を呼び掛け、最終的には自賠責の取り扱いの有無にかかわらず、任意の自動車保険を扱う全ての会社に利用していただけるようにしたい」と話す。
同システムでは、オンライン上での管理の対象にならない情報もある。同グループの江村祐二氏によると、情報共有の頻度などをプロジェクトで検討した結果、事故車両の写真など物損画像はシステム上で共有できるが、レントゲン・MRI等の医療画像はデータ容量が大きいため、当面は従来通りCD―ROMの郵送により対応してもらうことになったという。
同協会では今後も利用企業の受付を継続し、より多くの損保会社が参加する体制を目指す。「s―JIBAI」の利用拡大が進むことで、業界全体でのさらなる業務効率化の進展が期待される。
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