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新ヨーロッパ通信

バルセロナの熱気

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 バルセロナ港に近いランブラ大通りに、ラ・ボケリアという大きな公設市場がある。サン・ジュセップ修道院の跡地に1853年に設置された。
 内部はものすごい熱気だ。夏の太陽に照らされた金属製の屋根からの熱気に、人いきれが混じってむせかえるようだ。観光客たちが磁石に吸い寄せられるように集まってくる。カタルーニャ語、スペイン語だけではなく、英語、ドイツ語、フランス語、日本語、中国語などさまざまな言葉が飛び交っている。
 ここに来れば、鮮魚、カキ、野菜、果物、肉、香料、パン、菓子など何でもそろう。常に買い物客、観光客でごった返している。肉を売る店では、長さが1メートルを超えるイベリコ豚の脚が無数にぶら下がっている。人々はカウンターの前に並べられた椅子に腰掛け、イベリコ豚の生ハムを載せたパンをさかなにして、ワインのグラスを傾けている。
 カキにレモンを絞って食べさせる店、マグロのたたきや、揚げたイワシ、タコ、イカを出す店もある。海に面したバルセロナは、海産物も豊富だ。
 私の目を射たのは、果物店の搾りたての生ジュースの原色だ。ここが南ヨーロッパであることを感じさせる。オレンジジュースだけではなく、真っ赤なスイカのジュース、イチゴとオレンジを混ぜたジュース、黄色いレモンジュース、緑色のメロンジュースなどが入ったプラスチックの容器が、雪のように細かく砕かれた氷の上に並べられている。スイカを切ったものもコップに入れて売られている。
 ところで、私はこの市場で、妻が財布をすられるのではないかと気が気ではなく、周りを警戒していた。スペインではスリの被害に遭う外国人が多い。あるドイツ人の女性は、バルセロナでトランクを引きながら歩いていたら、強盗にトランクを奪われそうになった。通りがかりのタクシー運転手が「やめろ」と制止したので強盗は逃げた。ある日本人外交官の夫は、バルセロナの駅で混んだ電車に乗り込もうとした時に、誰かが自分の身体に触れるのを感じた。彼はウエストバッグから財布が盗まれていたのに気づいた。車掌は「この電車の中に泥棒がいる」とアナウンスして列車を停めて、たまたま乗っていた警察官が犯人を捜したが見つからなかった。私は今回の旅行では、幸い何の被害にも遭わなかった。スペインでは、外出する時には小銭かクレジットカードだけを持ち、紙幣やパスポートなどは持ち歩かずにホテルの金庫に保管することをお勧めする。敵はプロだから。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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