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ショルツ首相・苦渋の決断

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 ドイツは1月25日、レオパルド2型戦車をウクライナに供与すると発表した。この決定は、「難産」だった。ゼレンスキー大統領は、数カ月前からドイツに戦車の供与を要請していたが、ショルツ首相は「ドイツが他国に先駆けて戦車を送ると、ロシアから交戦国と見られる。同盟国と調整して決める」として、供与に反対してきた。
 ポーランド政府は「ドイツの優柔不断な態度は受け入れがたい」とショルツ政権を露骨に批判した。
 「独り歩き」を極度に嫌うショルツ首相は、「米国が自国製のエイブラムス戦車をウクライナに供与するならば、ドイツもレオパルド2型を供与する」という条件を付けた。バイデン政権は当初戦車の供与に反対していたが、ドイツの条件をのんで、31両のエイブラムスをウクライナに送ることを決めた。また、英国政府も今年1月15日に、同国製のチャレンジャー2型戦車をウクライナに供与すると発表した。この結果、ショルツ首相はレオパルド2型の供与を拒む理由を失い、ゴーサインを出した。
 レオパルド2型をめぐる議論は、ドイツの国際的な信用性を低下させた。国内外でショルツ首相に対して、「決断が遅く、欧州のリーダーにふさわしくない」という批判が集中した。
 昨年2月に米英がウクライナに携帯型対戦車ミサイルを供与していた時に、ドイツは5000個のヘルメットを送って国際社会の失笑を買った。だが、ドイツは他国の圧力のために、しぶしぶ旧式の携帯式対空ミサイルなどを送り始めた。
 ウクライナ政府が「対空戦車や装甲歩兵戦闘車を送ってほしい」と要請した時も、ドイツは「わが国が自国を防衛するために必要だ。他国に送る余裕はない」と拒否した。だが、他国からの批判が高まるとショルツ政権は圧力に屈し、これらの兵器をウクライナに送った。
 だが、ドイツ市民の間に、レオパルド2型の供与が戦争をエスカレートさせる可能性についての不安感があることも確かだ。ドイツ公共放送連盟(ARD)が1月19日に公表した世論調査によると、戦車の供与に賛成した市民の比率は46%だった。反対する市民の比率(43%)との差はわずか3ポイントである。ドイツ人の間では、戦火がNATO加盟国に広がることへの恐怖感が強い。
 ウクライナ政府は、「西側の戦闘機も送ってほしい」と要望している。欧米諸国は今後も、戦争をエスカレートさせずにウクライナの敗北も防ぐという、微妙な綱渡りを強いられる。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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