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新ヨーロッパ通信

ミュンヘンのドカ雪

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 12月1日から3日間にわたり、ドイツ南部バイエルン州は記録的な豪雪に見舞われた。私が住むミュンヘン市内では、雪が44センチ積もった。1933年に降雪量の記録が始まって以来、12月の積雪としては過去最高である。
 雪慣れしているはずのミュンヘンだが、降雪量が多かったために、バス、市電、通勤用の市街電車(Sバーン)の運行が全て止まった。長距離列車も線路に積もった雪や線路に倒れた樹木のために各地で走れなくなり、ミュンヘンは孤立状態になった。高速道路もかき氷のような状態になっており、時速60キロ程度でしか走れない。
 ミュンヘン空港では滑走路の除雪が間に合わず、毎日150便のフライトが欠航した。夜8時以降ミュンヘンに着陸するはずだった飛行機は、行く先を他の空港に変更された。
 普通、航空会社は足止めを食った客にホテルを斡旋する。だが、この日は足止めを食った乗客の数があまりにも多く、ルフトハンザもホテル予約ができなくなり、空港は大混乱。「三ツ星ホテルまでならば、ご自分で予約していただき、後で領収書を頂ければ、費用を負担します」という放送を繰り返していた。ミュンヘン空港周辺にはホテルが少ない。タクシー乗り場の前には、市内へ向かおうとする乗客数百人が長い列を作っていた。ミュンヘン空港から市内までは通常、車で45分。雪のために1時間以上かかったはずだ。タクシー料金は、片道100ユーロ(1万6000円)もする。タクシーで中心部へ行くのをあきらめて、空港の床で寝た人も多かったはずだ。
 私はこの日、ちょうど東京からミュンヘンに戻る家人の出迎えのために空港に行っていたのだが、飛行機の遅延と預けたトランクがなかなか出てこなかったために、空港で5時間も待った。外に出ると、車が雪の中に埋没していた。幸い家から雪かき用のちりとりを持ってきていたので、車を掘り出すことができた。
 ドイツ気象庁によると、このドカ雪は気候変動の表れだ。地球温暖化のために海水温が上昇しているので、雲が大量の水分を含んでいる。その雲がドイツ南部の上空に移動して冷たい空気にぶつかったために、大量の雪を降らせた。つまり、地球温暖化は、干ばつや夏の異常高温を引き起こすだけではなく、雲に含まれる水分を増やすので、集中豪雨や豪雪の原因にもなる。突然の大雪は、地球温暖化を覆す反証にはならない。だが、12月10日には日中の気温が10度まで上がり、44センチの雪は跡形もなく溶けてしまった。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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