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新ヨーロッパ通信

ドイツ人はテレワークがお好き

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 2020年のコロナ・パンデミック以来、ドイツでは多くの会社員が自宅勤務、つまりテレワークを体験して、その魅力を発見した。今年3月、ミュンヘンのIfo経済研究所は約9000社の企業を対象に、テレワークについてアンケートを行った。Ifoが発表したアンケート結果によると、回答した人の約25%が、「今年2月には、少なくとも1回はテレワークを行った」と答えた。この比率は20年以降、ほとんど変わっていない。
 この結果からIfo経済研究所は、「ドイツではテレワークは定着した」と結論付けている。コロナ・パンデミックの際には、銀行などの金融サービス企業やIT関連企業の社員の約90%が自宅で働いた。
 ただし、ドイツの大手企業の間では、社員の出社率を引き上げようとする会社が増えている。経営者たちはオフィスで働く社員の数を増やそうと必死だ。例えば、同国最大手の金融機関ドイツ銀行は2月に入って、「今年6月以降、管理職社員は少なくとも週に4日は出社すること。それ以外の社員も、テレワークは勤務日数の40%までに制限される。月曜日と金曜日のテレワークは禁止する」という通達を出した。ただし、社員たちからは強い不満の声が出た。
 欧州最大の自動車メーカー、フォルクスワーゲンも、昨年11月から管理職社員に対し、週のうち最低4日はオフィスで働くことを義務付けている。ソフトウエア・メーカーSAPは、週のうち少なくとも3日は自社または顧客のオフィスで働くことを義務付けている。通信企業ドイツ・テレコムでも、社員は週3日オフィスで働くことを求められる。
 管理職にとっては、部下がオフィスで働いている方が指示などを出しやすいし、部下が働いているかどうかをチェックできるという利点がある。リモートでは、部下が何をやっているかわからない。部長が大部屋に一人で座っていても、彼は権力を発揮できない。一方、部下はテレワークを行えば自分のペースで仕事をできる。オフィスだと上司から「××くん、ちょっと来てくれないか」といつ言われるかわからない。
 テレワークが普及すると、ニューヨークやロンドンのように家賃が高い都市に立派なオフィスを借りる必要性は減る。企業はオフィスの賃貸料を節約して、別の目的に回すことができるかもしれない。不動産業界には凶報だ。
 今後、世界の多くの企業では、オフィスの持つ意味が減っていくだろう。「会社に何時間いるか」ではなく、「どんな成果を生むか」が鍵となる。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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