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新ヨーロッパ通信

デジタル民泊はつらいよ

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 私は毎年仕事でパリに行く。しかし、この町のホテル代は高い。ニューヨークやロンドンと並んで、世界で宿泊費が最も高い町の一つだ。そこで今回初めて、米国のエア・ビー・アンド・ビー(AB&B)というオンライン民泊を使うことにした。
 金額的にはホテルよりも少し安い。普通は泊まれないパリの住宅に泊まれるというのも面白い。オペラ座に近い、ある劇場の建物の上層階が住宅やオフィスとして使われている、ウナギの寝床のような建物だ。このアパートは個人の所有ではなく、パリの不動産会社が管理していた。
 しかし、事前の手続きは厄介である。利用者はまずAB&Bのサイトに会員として登録しなくてはならない。その際に、「あなたのパスポートの顔写真があるページをスマホで撮影してわが社のサイトにアップロードして下さい」とか、「あなたの顔写真をスマホで撮影してアップロードして下さい」など注文が多い。しかも、宿泊する10日前にクレジットカードから料金が引き落とされてしまう。大半のホテルではチェックアウトの時に料金を払うのに比べると、料金先払いは客にとって不利である。
 大きな問題は、鍵の受け渡しだ。担当者とチャットで連絡を取り、正午に住宅の前で落ち合うことにした。ところが、ミュンヘンで大雪が降ったために、飛行機のパリ到着が約2時間遅れた。担当者は「他の客を別の住宅にチェックインさせなくてはならず、午後2時にならないと待ち合わせの場所に行けない」という。担当者はなかなか到着せず、私は寒風の中、歩道で1時間近く待たされた。
 最大の問題は、2日後の夜に起きた。突然トイレが使用不能になったのだ。AB&Bに抗議したところ、ただちに別のアパートを準備した。夜中に荷造りし、タクシーに乗って新しいアパートに引っ越さなくてはならなかった。そのアパートは、最初のアパートに比べると広かったが、中心街から車で15分の距離にあった。仕事の上では不便だ。
 米国でAB&Bを利用した人によると、「とても快適だった」という感想も聞いた。会社が管理している住宅では、所有者から直接借りる住宅ほどきめ細かなサービスが得られない。パリのように建物が古い町では施設をめぐるトラブルが起きやすいので、デジタル民泊は向いていないようだ。私が住んでいるミュンヘンでは、トイレの故障はめったに起こらない。パリに住んでいる人によると、トイレの故障は「全然珍しくない、日常茶飯事」だそうだ。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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