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ドイツ戦車と装甲車・ウクライナへ

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 ドイツのショルツ政権は1月6日、同国製のマルダー型装甲歩兵戦闘車40両と、パトリオット・対空ミサイルをウクライナに供与すると発表した。
 ウクライナのゼレンスキー政権は「この戦争は、ロシア軍をクリミア半島とドンバス地区を含むウクライナ領から完全に撤退させるまで終わらない。ロシア軍を駆逐するには、現在ある兵器だけでは不十分だ。ドイツのレオパルド2型など西側製の戦闘戦車(MBT:メイン・バトル・タンク)や、マルダーのような西側製の装甲歩兵戦闘車が不可欠だ」と主張してきた。
 だが、ショルツ首相は「米国など他の国々も、戦闘戦車や装甲歩兵戦闘車は供与していない。ドイツがいち早く供与すれば、ロシアから交戦国と見なされる。北大西洋条約機構(NATO)とロシアの戦争を避けることは私の最大の義務だ」と述べ、レオパルド2とマルダーの供与を拒んできた。
 だが、1月6日に米国が同国製のブラッドレー歩兵戦闘車を、フランスが同国製のAMX―10RC偵察戦闘車をウクライナに送ることを発表した。ショルツ首相も圧力に屈して、ウクライナの要求通りマルダーの供与を決めた。
 ドイツ国防省の発表によると、昨年1月1日からの1年間にドイツがウクライナに供与した兵器、弾薬、装備の総額は22億4530万ユーロ(3143億円、1ユーロ=140円換算、以下同じ)に上る。キール世界経済研究所(IFW)のデータバンクによると、ドイツの軍事支援額は米国(228億6000万ユーロ)、英国(41億3000万ユーロ)に次いで世界で3番目に多い。 
 ウクライナが切望するレオパルド2型の供与も時間の問題だ。ウクライナはロシア軍を領土から駆逐するために約300両の戦車を必要としている。レオパルド型を使っている国は、ポーランド、トルコ、オランダ、ギリシャ、デンマーク、カナダなど13カ国に上り、約2000両が使われている。これらの国々が「レオパルド・プール」を結成し、合同で戦車をウクライナに送ることになるだろう。そうすれば、ドイツが心配している独り歩きは避けられる。
 在欧米国陸軍のベン・ホッジス元司令官は「ウクライナ軍は4月に反攻作戦を開始し、クリミア半島を奪回する」と予測しているが、欧米諸国がこれまで避けてきた戦車や歩兵戦闘車の供与を開始するのは、ウクライナ軍の春季大攻勢を支援するためかもしれない。西側の戦車は、膠着状態のウクライナ戦争に転機をもたらすだろうか。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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