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E燃料に期待をかける自動車業界(上)

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 ドイツの自動車業界は、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指している。そのための主な戦略は、電池だけを使う電気自動車(BEV)の普及である。現在ドイツでは約84万台のBEVが使われているが、ドイツ政府はこの数を30年までに1500万台に引き上げるという目標を持っている。
 この国では、BEVシフトが本格化している。ドイツ陸運局によると、19年に売られたBEVの新車の台数は約6万3000台だった。しかし、20年に政府はBEVの購入補助金を2倍に増やした。この結果、22年のBEVの新車販売台数は約47万台と約7.8倍に増えた。プラグイン・ハイブリッド車(PHV)の新車販売台数も、19年の4万5000台から、22年には36万台と8倍に増えた。
 22年のドイツの新車販売台数にBEVとPHVが占める比率は31.4%。これは日本の比率(3.1%)の約10倍である。
 ドイツ政府は20年から22年までPHVにも購入補助金を出したが、今年1月1日には廃止した。いわゆるハイブリッド車(HV)には、最初から補助金は出ない。つまり、今年から購入補助金を受けられるのはBEVだけになった。
 しかし、50年になっても、世界中ではガソリンやディーゼルエンジンを使う大量の中古車が走っている。これらの車のための燃料を製造する際に排出される二酸化炭素(CO2)を減らすことも、重要な課題である。そこでドイツの自動車業界は、製造過程でCO2が排出されない、新しい合成燃料の開発を進めている。
 この燃料は、大気中のCO2と水素を使って合成メタノールを製造し、最終的に自動車の燃料に変換するもので、E燃料と呼ばれている。欧州でE燃料の開発に最も力を入れているのが、スポーツカーのメーカーとして知られるポルシェ(本社・シュトゥットガルト)と、シーメンス・エナジー(本社・ミュンヘン)だ。
 21年9月14日、両社はチリ南部のプンタ・アレーナスで、水素を使ったE燃料製造のための実証実験を行うパイロット工場の建設を開始した。
 水素の生成過程でCO2が排出されることを防ぐために、水を電気分解する際に使われる電力には、風力や太陽光などによる再生可能エネルギーからの電力が使われる。再生可能エネルギー電力だけを使って作られた水素を、グリーン水素と呼ぶ。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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