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愛あるパワハラ

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 勤務していた会社のOB会で久しぶりに「K主任」にお会いした。懐かしく新入職員時代を思い出した。主任といっても後の専務取締役である。柔和な笑顔を湛えて後輩を含めどなたにもご挨拶をしてくださるK専務であるが、コラム子には今でも、感謝とともに「K主任」になってしまう。学校の後輩でもあり学生気分の全く抜けていない、どうしようもない若者を何とか職員に鍛えてくださったあの鬼軍曹だ。
 例えば、コラム子が苦労して作成した書類を、主任が点検してミスを見つけてくださるのだが、その書類に赤鉛筆で大きなバッテンを付けてそのまま突き返してくる。無論、どこが間違っているかも教えてくれない。何とか間違いを見つけてもその部分だけを修正して再提出することはできない。最初からすべてを書き直すことになる。
 当時の正式文書は原稿を作ってタイプ室に持参し作成してもらうのだが、いつもの定例文書でも前の原稿をコピー室でコピーして切り張りして作成することは許されなかった。これも一から手書きで提出させられた。
 こうして、自己チェックの徹底、間違いやすい部分の自己認識、文書の背景にある法律や考え方、構成を叩き込まれた。
 当時はそんなこともわからず、自分のミスとしてもつらいとしか思えなかった。現在なら、はやりの職場の「パワハラ」と捉えられてしまいそうな対応だった。
 今思えば、主任自身で修正して遂行すればどんなに効率的でスピーディだったことか。なんという手間をかけてくださったのか。「こいつを何とか早く一人前にしてやろう」という愛情ある特訓であった。これはやはり「愛あるパワハラ」であった。(朗進)

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