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保守政党が極右政党と「協力」(下)

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 キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は1月29日、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)の協力を得て、難民規制決議を連邦議会で可決させた。これに対し社会民主党(SPD)と緑の党は、「AfDとの事実上の協力は、タブーを破る行為だ」と強く批判した。ベルリンやハンブルクなどでは市民約25万人が、CDUのメルツ党首に抗議するデモを行った。
 ユダヤ人の著述家フリードマン氏は、「メルツ氏の決定は破局であり、容認できない」としてCDUから離党した。ホロコーストから生き残ったあるユダヤ人は抗議するために、ドイツ政府から授与されていた勲章を返納した。
 メルケル前首相は、2021年に辞任して以降、政局に関する発言を避けてきた。だが今回は自粛措置を破り、「メルツ氏は、AfDと協力しないという昨年11月に行った約束を守るべきだ」と異例の発言を行った。これまでもメルケル氏とメルツ氏は犬猿の仲だったが、今回の決議によって溝はさらに深まった。
 「約束を破った」という世論の批判を覚悟の上で、メルツ氏があえてAfDの賛成を黙認して連邦議会で決議案を採択させた理由は、昨年から外国人による無差別殺傷事件が頻発しているからだ。メルツ氏は現在のドイツの状態を放置することはできないと考えた。
 昨年5月31日には、マンハイムでアフガニスタンからの難民が警察官1人をナイフで殺害し、5人に重傷を負わせた。8月にはゾーリンゲンでシリア難民がナイフで3人を殺害し、8人が重軽傷を負った。
 12月にはマクデブルグで、サウジアラビア人の難民が車でクリスマス市場に突っ込み、6人を死亡させ、約300人に重軽傷を負わせた。今年1月にはアシャッフェンブルクの公園でアフガニスタン人の難民が2歳の幼児と41歳の通行人をナイフで殺害し、3人に重傷を負わせている。2月13日にはミュンヘンで、アフガン難民がデモ行進中の市民の隊列に突っ込み、36人に重軽傷を負わせた。
 つまり、昨年5月からの8カ月に、難民による無差別殺傷事件・傷害事件が5件起きた。私は35年間ドイツに住んでいるが、これほど難民による凶行が頻発したことは一度もない。
 多くのドイツ市民が、治安悪化に対する不安を感じている。特に警察や行政の仕事のずさんさには、多くの人が不満を持っている。
 メルツ氏の「タブー破り」にもかかわらず、彼への支持率は下がっていない。このことは、多くの市民が「難民に関する状態を放置してはならない」と強く感じていることを示している。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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