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【新ヨーロッパ通信】EUが内燃機関の新車販売禁止を撤回(下)
欧州委員会は昨年12月、「2035年以降、内燃機関の新車販売を禁止する」という決定を撤回した。だが、誤解を避けるために強調したいのだが、欧州委員会は電池だけを使う電気自動車(BEV)の普及を諦め、ガソリンやディーゼルエンジンの車の購入を奨励するわけではない。欧州委員会は、中長期的に欧州のモビリティーの中心をBEVにするという方針を維持している。実際、欧州委員会は、今回BEV普及を加速するための二つの措置を提案した。
一つは、企業の社用車に課されるBEV最低比率だ。年間売上額が5000万ユーロ(90億円、1ユーロ=180円換算)、社員数が250人を超える企業は、社用車として購入する新車の一定割合をBEVにすることを義務付けられる。
もう一つは、小型BEVの支援策だ。欧州委員会は車長が4.2メートル以下で、EU域内で生産されたBEVを自動車メーカーの二酸化炭素(CO2)排出量の削減幅の計算の際に優遇する。
意外なのは、ドイツの自動車業界が欧州委員会の今回のCO2規制緩和案を強く批判していることだ。
ドイツ自動車工業会(VDA)は、「欧州委員会の提案内容は不十分であり、失望させられた。特に、グリーン鉄鋼や合成燃料、バイオ燃料という、自動車業界が影響を及ぼせないCO2削減手段の使用が義務付けられたことは受け入れ難い。大企業の社用車に関するBEV最低比率の義務化にも反対する」という声明を発表した。
グリーン鉄鋼や合成燃料、バイオ燃料は、まだ広く普及していない。例えば、24年にドイツで生産された鉄鋼の3分の2は、石炭などを使った高炉で生産されていた。
自動車業界はグリーン鉄鋼や合成燃料の量を独自に増やすことはできず、他の業界に依存することになる。鉄鋼業界や燃料メーカーが「経済性は低い」と判断したら、普及が大幅に遅れる。35年までにこれらの技術がどの程度普及するかは未知数である。このためVDAは、CO2削減量の10%について、グリーン鉄鋼や合成燃料などの使用の義務化に反対しているのだ。
また、前述のようにドイツでは新車の3分の2が企業によって社用車として購入されているので、「企業の社用車に関するBEV最低比率の義務化は、事実上、内燃機関の新車の禁止措置の継続だ。ビューロクラシーを減らすというEUの原則に反する」という指摘もある。
欧州委員会の提案は、欧州議会と加盟国政府によって承認されなくてはならない。その過程で、自動車業界の批判がどの程度配慮されるかが今後の焦点だ。
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92
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