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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】イラン戦争・停戦交渉決裂

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 2026年に入って、世界のタガがはずれたと思わせる出来事が続く。米国とイスラエルは2月28日に突然イランを攻撃した。40日間の戦争の後、トランプ大統領は4月7日、「イランとの間で2週間にわたる停戦について合意した」と発表した。4月11日には米国政府とイラン政府がパキスタンのイスラマバードで和平交渉を開始した。
 両国は21時間にわたり協議したが、交渉は決裂した。もともと両者の立場は大きく隔たっており、合意の可能性は低かった。
 例えば、米国は、イランのウラン濃縮停止と、これまで生産した濃縮ウランの廃棄か引き渡しを要求していた。米国の攻撃で多数の死傷者を出したイランがすんなりと濃縮ウランを米国に引き渡し、将来もウランを濃縮しないと約束するとは思えない。むしろ「爆撃によって石器時代に戻す」とか「文明を終わらせる」というトランプ大統領の恫喝を聞いて、イラン政府は逆に「核兵器を絶対に開発しなくてはならない」という決意を新たにしたかもしれない。実際、欧米では、戦況がエスカレートした場合、米国が核兵器の使用を考えるのではないかという憶測が出ていた。
 もう一つのハードルは、イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡の扱いだ。米国は世界の原油価格がさらに高騰することを防ぐために、イランが船舶の自由な航行を許すよう求めている。
 これに対しイランは、海峡を通る船舶から一種の通行料を徴収して、戦争で破壊された都市やインフラの復興資金に充てることを考えている。イランにとってホルムズ海峡は、世界経済を人質にして、米国に圧力をかけるための重要な材料だ。このためイランが、すんなりと米国の要求を受け入れるとは考えられない。
 レバノン情勢も、大きなハードルだ。米国とイスラエルのイラン攻撃に呼応して、イランの影響下にあるテロ組織「ヒズボラ(神の党)」がイスラエル北部にミサイルを撃ち込んだ。イスラエルはレバノン南部からヒズボラを掃討して無人の緩衝地帯を作るだけではなく、ベイルートにも猛烈な空爆を実施している。
 イラン側は2週間の停戦にレバノン戦線も含まれると主張しているが、イスラエルは「含まれない」として攻撃を続けている。イスラエルとレバノンのテロ組織は、過去において何度も戦闘を繰り返してきた。このためイスラエルのネタニヤフ首相が、イランの要請を受け入れて、レバノン攻撃をやめるとは思えない。初めから、成功の見込みが低い和平交渉だった。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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