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うず

多様性

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 3月になった。今年は久しぶりにひな人形を飾ろうとしたところ、高校生の息子が大反対である。いわく、顔が「怖い」そうだ。全く予想しなかった反応に、伝統的な人形が怖いなどと不思議なことを言うなあ、と思っていたが、どうもこう感じるのは拙宅の息子だけではないことに、2月某日のY新聞のくらし面記事で気付かされた。
 「ひき目かぎ鼻」に代表されるような、昔の日本の顔はどうも今の時代では好かれぬらしい。記事によれば、今では顔立ちはぱっちり目元に丸顔であったり、ヘアスタイルも茶色であったりアップスタイルであったり、十二単(ひとえ)も重厚なものでなくてしゃれたプリントであったりと、多様なデザインが試されているそうだ。人形メーカーでも、現代風の顔やメークに変更するなど「けしからん」という意見や、お客さまの好むものを作るのだという意見と、さぞ喧々諤々あったのだろうと思量する。
 そもそも、ひな人形とはどんな目的で作成されたのか少しひもといたが、どうもこれも諸説あるようだ。私自身は子どものころに女児の幸福な結婚を願って贈られたと教えられたが、現代の家族がひな人形を贈る目的や意味も、贈り主の思いを貫いてもいいじゃないか、これも多様化、思考の多様化なのかしらなどと納得したのだ。
 さて、拙宅では結局のところ、客間に古いひな人形を他の飾り物とアレンジして飾った。さすがに古ぼけているけれど、とても味がある。新しいものには新しい良さがあるし、使い続けてきたものには歴史や思い出がある。今年の桃の節句は、母が私に伝えようとした愛情や思いを感じつつ、多様性とはどうあればよいのか、と考えさせる出来事になった。(こゆ美)

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