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欧州はBEVにまっしぐら

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 2月14日、欧州議会は2035年以降ノー・エミッション・カー(無排出車)以外の新車の販売を禁止するという法案を可決した。欧州委員会は50年までにカーボンニュートラルを達成するために、運輸部門の二酸化炭素(CO2)の削減目標を厳しくした。
 当初EUは、30年までに乗用車と軽商用車の新車のCO2排出量を、21年に比べて37.5%減らす方針だった。しかし、欧州委員会は30年の削減率を55%に引き上げた。35年には削減率を100%とする。この決定によって、EU域内では、バッテリーだけを使う電気自動車BEVと燃料電池車以外の新車の販売が35年以降、事実上禁止される。
 ドイツの新車販売状況を見ると、消費者の間でBEV購入者が着実に増えていることがわかる。ドイツ自動車局によると、22年に登録されたBEVの新車の台数は、前年に比べて約32%増えて47万559台となった。プラグイン・ハイブリッド(PHV)の新車の登録台数(36万2093台)を30%上回る。
 19年のBEVの新車登録台数は6万3281台だった。つまり、BEVの新車登録台数は、3年間で約7倍に増えたことになる。
 19年にはBEVとPHV新車登録台数の比率は3.1%にすぎなかったが、22年には31.4%に激増した。逆にガソリン・ディーゼルエンジンの車の比率は91.2%から50.4%に減った。
 電動車の売れ行きが伸びている理由は、ドイツ政府が20年にBEVとPHVへの購入補助金を大幅に増やしたためである。価格が4万ユーロ(560万円、1ユーロ=140円換算)以下のBEVを買うと100万円を超える購入補助金を政府と企業から受け取れる制度に、多くの消費者が飛びついた。
 ドイツ政府は今年からBEVだけを重視する方向にかじを切った。今年1月1日からPHVへの購入補助金を打ち切ったのである。BEVの補助金は減額するものの残される。今後はPHVではなくBEVを買うドライバーが増えるだろう。
 ドイツでは現在、約100万台のBEVが使用されているが、政府はこの数を30年までに1500万台に引き上げるという目標を持っている。そのためには、100万基の公共充電器が必要とされている。しかし、昨年11月の時点で公共充電器の数は7万2091基にとどまっている。そのうち、急速充電器の数は約16%(1万1862基)にすぎない。BEVの普及を加速するには、充電インフラの整備が不可欠だ。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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